2020年10月31日土曜日

SURUGA VISAデビットカードが突然、無効になるリスク

スルガ銀行(静岡県沼津市、東証1部上場)の『SURUGA VISA デビットカード』は、 2005年(平成17年)から発行されており今年で15周年を迎え、日本国内の銀行が発行するデビットカードの中でも老舗として知られています。しかし、その後に追随した他の銀行と違って発行にはスルガ独自の審査が必要であり、発行後であってもいつ、どこで無効にされるかわからないというリスクを抱えています。海外在住の長い方はもちろん、そうでない方も完璧な手を打っておかないと長期間維持するのは難しい代物と化しています。 

SURUGA VISA デビットカードは、スルガ銀行に口座がある15歳以上の方なら誰でも申し込みができることになっています。しかし、発行には審査が必要であり、その結果によってはデビットカードではなく日本国内でしか使えない通常のキャッシュカードが発行されたり、酷いと口座開設そのものを拒否されることすらあります。

発行後も、次に該当した場合は事前の予告なしに会員資格を失わせ、デビットカードの返納を指示できると規定されています。

・発行後1年以内にショッピング利用実績が全くない(会員規約4条の(3))
・スルガ銀行への届出事項に対する届け出を怠った(会員規約12条3の(1))
・スルガ銀行に対して虚偽の届出を行ったことが判明した(会員規約12条3の(1))
・破産宣告、民事再生手続き開始決定または支払い停止(会員規約12条3の(6))
・会員がスルガ銀行に有している預金その他の債権に対して、裁判所の決定に基づく仮差押え、または静岡地方税滞納整理機構(静岡市葵区)、静岡・神奈川両県の基礎自治体等による差押えの通知書が出された(会員規約12条3の(7))

最も多いのは、一番最初の利用実績が少ないケースですが、最後の差押え命令の発布によってSURUGA VISAデビットカードを失うケースも多いといいます。静岡県内では静岡市・浜松市・沼津市を除くすべての市町で国民健康保険が「税」扱いとなっており、神奈川県でも横浜・川崎は「料」扱いなのに対して相模原市は「税」扱いをしています。就職して協会けんぽ(全国健康保険協会:東京都新宿区)へ加入した時に国民健康保険の脱退の手続きを怠り、国民健康保険税が課税されていることを知らずに放っておくと、自治体の国民健康保険課が国民健康保険法(1958=昭和33年法律192号)79・80条に基づいて差押えを通知してきます。また普通徴収(郵送されてくる納付書で納める)の住民税や、自動車税・軽自動車税を納めなかった場合も、国税徴収法(1959=昭和34年法律147号)47条を準用して各自治体の税務課が差押えに動きます。

スルガ銀行では、差押通知書を受領すると、対象者の口座を通常の本支店、ネット専用支店関係なくすべて名寄せし、まず普通預金の残高から差し引きます。引き足りない場合は、定期預金の残高があればそれが徴収金額を満たすまで強制解約して差押え、ない場合は国税徴収法79条に基づいて当局に差押え解除を要請し、再び使えるようにします。そして、差押え通知書を受領した時点に遡って会員規約12条の3を厳格に適用し、発行されているすべてのVISAデビットカードの会員資格を喪失させ、本人に郵送か最寄りの支店へ出向いて返却するように指示します。

ただし、会員資格喪失の事実は個人信用情報機関のCIC(東京都新宿区)および日本信用情報機構(東京都台東区)には通知せず、楽天カード(東京都港区)の「エラーコード:2」と呼ばれる強制退会と同様に、他のクレジットカードやローンの組成には影響が及ばない策も取られます。とはいえ、スルガ銀行の社内的にはかなりのマイナス評価を受けることが避けられません。

2016年9月以前は、SURUGA VISA デビットカードの保有が絶対必須のネット専用支店『マイ支店』もあり、万が一マイ支店の口座でデビットカードを失う事態となった場合は、普通預金口座の解約も必要でした。マイ支店はそれまでの一般的なネット専用支店だった『ネットバンク支店』と統合して『Dバンク(デイバンク)支店』に衣替えし、デビットカードの保有も必須ではなくなりましたので、デビットカードを失う事態になっても通常のキャッシュカードが代わりに発行され、口座自体無くなってしまうという最悪の事態は回避されています。

また、ANA(NH)との提携によりANAマイレージクラブのマイルが貯まる『ANA支店』でも新規顧客に対しては原則VISAデビットカード(『Financial Pass Visaデビットカード』)を発行するとしていますが、VISAデビットカードを失った会員に対しては通常のキャッシュカードとAMCカードを統合した従来の『AMC Financial Pass』が改めて発行されます。しかし、ANAには新業態行のソニー銀行(東京都千代田区、全国銀行協会加盟)やPrestia(SMBC信託銀行:東京都港区)と提携した商品もあり、これからデビットカードに切り替えるAMC会員がFinancial Pass Visaデビットカードを作る意味合いは薄れています。