JR東日本水戸支社(茨城県水戸市、東証1部上場)は、2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故で甚大な被害を受けていた常磐線の富岡(福島県富岡町)~浪江(福島県浪江町)間の営業を、今年3月14日(土)の全国ダイヤ改正と同時に再開すると発表しました。
常磐線は、東日本大震災直後には久ノ浜(福島県いわき市)と亘理(宮城県亘理町)の間が不通になりました。この区間では高さ最高21mに達した津波の直撃を受け、線路や駅舎といったインフラが多くの場所で流出、破壊され尽くしました。今回復旧する区間はさらに、福一事故に伴う放射能拡散で警戒区域指定(事実上の避難命令)が出されたことから、震災後数年間は復旧に手を付けるどころか、被害状況の調査をすることすらできませんでした。2014年になってようやく本格的な調査が始まり、2016年3月5日に内閣総理大臣・安倍晋三(自民党、衆院山口4区)が福島県楢葉町で
「2020年3月までの全線復旧を目指す」
と発言したことによって、正式に復旧工事が始められました(前記事「震災5周年…常磐線全通にメド、気仙沼線は鉄路断念へ」参照)。
工事は線路沿いの土地の除染からスタートし、放射能により汚染されたレールや枕木を総取り換えしたのち、夜ノ森駅(福島県富岡町)、大野駅(福島県大熊町)、双葉駅(福島県双葉町)の駅舎を建て直すという大掛かりなものでした。すべての除染が終わるのに2年半を要し、駅舎の建て替えや設備の入れ替えにも時間をかけて、19年12月までに工事が完了して試運転を始められる状況になりました。そして、設備に問題がないことが確認されたため、事前に双葉町と大熊町、富岡町の一部に出されていた避難指示を解除した上で、列車の営業運転を再開することにしたものです。
ただし、震災前の『スーパーひたち』ではいわきまで11両編成で、以北は4連で運転される日が多かったのに対し、今回復活する『ひたち』に使っている特急電車『E657系』は10両固定編成しかないため、品川から仙台まで10連で運転。これにより1列車あたりの輸送力は震災前の2.5倍と圧倒的に拡大されます。これは、ひたち号と並行する高速バス『いわき号』(新常磐交通:福島県いわき市)の原ノ町便が運行再開に至っていないための措置でもあります(常磐富岡までは再開済み)。
ちなみに、上野駅8時、13時、16時ちょうど発の常磐線回り仙台行き優等列車は、国鉄時代の1982年(昭和57年)から存在する伝統のあるダイヤです。57.11改正ダイヤでは8時発の『急行ときわ』があり、13時と16時には特急ひたちが設定されていました。