2020年2月4日火曜日

パスポートの増補制度、廃止検討も当面存続

外務省領事局(東京都千代田区)は今日2月4日申請受理分から、一般旅券(パスポート)のデザインを新しいものに切り替えます。パスポートのデザインや形式が変わるのは2006年以来14年ぶりで、ICパスポート導入後は初の改定となります。

今回の改定では、査証欄のページを増やすことのできる『増補制度』を廃止することが真剣に検討されましたが、結局存続することになりました。

従来の旅券(外務省内呼称『2006年旅券』)では、5年旅券(紺色の表紙)が全36ページ中査証欄28ページ、10年旅券(臙脂色の表紙)は全52ページ中44ページが査証欄として使える仕様で、出入国スタンプやビザの貼付が進んで余白がなくなった場合、1回に限り40ページの追加査証欄を各都道府県のパスポート担当部局ないしは市町村役所(市町村に権限移譲されている府県のみ)、在外の日本大使館・総領事部・領事駐在官事務室で申請し、増補することができます。

この制度は2006年に現行のICパスポートが導入された後も維持されてきました。しかし、欧州圏やアメリカなど他の先進国では既に増補制度を維持している国はなく、国によっては2014年3月限りで廃止された『訂正旅券』と同様に相手国の入国審査官が偽造や変造と判断して別室送りにしたり、最悪入国を拒否されたとの報告も寄せられるようになっていたといいます。このため、外務省領事局旅券課は世界の趨勢に合わせて増補制度を廃止し、査証欄がなくなった場合、有効期間を古いパスポートの残存期間と合わせた新しい冊子を発行するという対応に切り替える方針を一度は決定しました。

しかし、増補制度を廃止するには旅券法(1951=昭和26年法律267号)を改正する必要があります。2019年1月29日に産経新聞が第一報を伝え、共同通信も19年9月17日に外務省関係者の話として報じましたが、19年10月の第200臨時会、そして1月20日に召集された第201通常会の2回の国会共に改正案が提出されませんでした。そこで、Traveler's Supportasiaが外務省領事局旅券課に電話取材したところ、

「旅券の増補制度は当面存続する。2020年旅券の増補も行う」

との回答がありました。

新しいパスポート(『2020年旅券』)の査証欄には、江戸時代後期を代表する連作浮世絵『富嶽三十六景』(葛飾北斎作)のモチーフがデザインされるこちらを参照)ことになっていますが、外務省領事局は

「増補のページには富嶽三十六景は使われない。ページの色合いのみが旅券本体と合わせられる」

とも回答しました。