2020年1月17日金曜日

長崎スマートカード廃止へ、nimocaに統合

長崎県営バス(長崎市)と西肥バス(長崎県佐世保市)は、全国初のバス共通ICカードとして2002年から続けてきた『長崎スマートカード』の後継に、西日本鉄道(西鉄:福岡市博多区、東証1部上場)の子会社が運営する『nimoca』を選定したと発表しました。nimocaは交通系ICカード全国相互利用サービスに対応しているため、本格的運用が始まる3月22日(日)から、ICOCA(JR西日本)やSuica(JR東日本)など交通系ICカードで、長崎県内の大半の路線バスと、長崎電気軌道(長崎市)の路面電車、さらには第三セクター鉄道の松浦鉄道(長崎県佐世保市)が利用できるようになります。

長崎スマートカードは、Suicaがサービスを始めた翌年の2002年(平成14年)にサービスを開始しました。Suicaと同じくソニー(東京都港区、東証1部・NYSE上場)の非接触カード技術『Felica』を採用し、その後に導入されたnimocaやPASPY(広島電鉄・広島県バス協会)、くまモンのICCARD(熊本県バス協会)など路線バスでの利用が中心となる交通系ICカードの技術的基礎が確立される形となりました。2005年には、全国初となるおサイフケータイ(『モバイル長崎スマートカード』)がサービスインしました。

しかし、後発のPASPYは当初からICOCAの片乗り入れを受け入れていたのに対し、長崎スマートカードはnimocaが立ち上がった後も乗り入れや相互利用などのサービス拡大を図らずガラパゴス化。2013年にnimocaが全国相互利用に参加した後も、nimocaはもちろんSUGOCA(JR九州)など他の種類の交通系ICカードもここまで一切、長崎スマートカードのエリアでは使えませんでした。

2016年、同種の独自ICカードを導入した宮崎交通(宮崎市、『宮交バスカ』)がnimocaに全面的に切り替えたのをきっかけに、長崎県バス協会でも次期システムへの移行時期に全国相互利用が可能なnimocaへ切り替えることが検討されましたが、長崎バス(長崎市)がこれに反発します。

「nimocaは福岡の会社。個人情報や運賃収入が長崎県外に流出してしまう」

などと難癖を付けた長崎バスはあくまで独自方式にこだわることにし、Tポイントジャパン(東京都目黒区)と提携した『エヌタスTカード』の発行を始めてしまいます。この結果、長崎スマートカードの後継は長崎バスグループ専用のエヌタスTカードと、他社のnimocaに二分されることになってしまいました。

長崎空港(長崎県大村市)と長崎市内を結ぶリムジンバスは、県営バスと長崎バスの2社が運行していますが、長崎スマートカードでは両社とも利用できたものの、長崎バス便はエヌタスTカードを持っていない他県からの旅行者は現金しか使えなくなる恐れがありました。このため、長崎バスでは県内他社に先駆けてnimocaの片乗り入れ利用(nimocaおよび全国相互利用可能な交通系ICカードは長崎バスで乗車に利用できるが、チャージはできない。またエヌタスTカードは他社で使用できない)を受け入れることにし、2月16日(日)付で運用を開始しました。これにより旅行者に対する利便は確保されました。なお西鉄が販売する九州島内バスフリー乗車券『SUNQパス』は、今後も県営・長崎バスの両方で利用できます。

現行の長崎スマートカードは、長崎バスでは既に昨年12月27日限りで取り扱いを終了しています。他の事業者でも、3月22日のnimoca運用開始後は積み増し(チャージ)が出来なくなり、6月30日で利用終了、7月1日からは5年間の予定で払い戻しのみの受付となります。なお、払い戻しの際には手数料分として残高の1/11(9.1%)が引かれてしまうため、バス協会ではスマートカードの残高をできることなら全額使い切ってほしいと呼びかけています。