2018年5月31日木曜日

キヤノン最後のフィルムカメラ、メーカー在庫払底で幕

キヤノン(東京都大田区、東証1部・NYSE上場)は、創業以来80年以上に渡って手掛けてきたフィルムカメラの最後の機種だった『EOS-1v』をカタログアウト(販売終了)したと発表しました。生産自体は2010年(平成22年)に完了していて、その後は在庫を細々と出荷してきましたが、今回メーカー在庫自体が払底したため公式にカタログアウトとなったもの。同時にキヤノン製フィルムカメラの歴史に終止符が打たれます。

キヤノンは、1933年(昭和8年)に『精機光学研究所』の社名で創業以来、一貫してカメラを手掛けてきた映像関連産業大手の一角です。1960年代の『キヤノン7』まではレンジファインダー式が主力で、一眼レフカメラ事業が軌道に乗ったのは1970年代の『F-1』から。80年代には『AE-1プログラム』『EOS650』などのヒット商品を連発し、ニコン(東京都港区、東証1部上場)と業界のトップを競う大企業に成長しました。

『EOS-1v』は、オートフォーカス一眼『EOSシリーズ』のフラッグシップモデルとして、2000年(平成12年)3月に発売された製品です。当時最先端の技術をすべて詰め込み、『F-1』以来の通算5代目(EOS-1系では3代目)のフラッグシップ機という意味で、英語のVisionのVと、ローマ字の5にあたる「V」をかけて名づけられたもので、オープン価格とはいえ当時想定価格30万円、市場では写真系量販大手のヨドバシカメラ(東京都新宿区)で最近まで21万3000円(消費税込み、ゴールドポイント10%還元前)の値段がついていました。

しかし、EOS-1vが発売された翌年の2001年、EOS-1系は本格的なデジタル一眼レフの時代へ移行します。その後もフィルム一眼は『EOS Kiss 7』『EOS7s』などが発売されますが2007年(平成19年)までに終了となり、EOS-1vが最後のキヤノン製フィルムカメラとなりました。

実は、キヤノンでは同様の販売手法を過去にも取ったことがあります。マニュアルフォーカス一眼の初代フラッグシップにもかかわらず、結果的に最後まで残った『F-1』は、1992年(平成4年)に生産を打ち切った後も、在庫が掃けた1996年(平成8年)5月までカタログアウトしませんでした。

今回のEOS-1vは、2010年(平成22年)10月の時点で生産を終えていて、本来のサービス規約通りならフィルム一眼は製造終了後10年間のサポート対応となるので、2年後の2020年10月には修理受付も完了となってしまう恐れがありました。今回、キヤノンでは生産完了後8年も経った後のカタログアウトという事情を考慮し、「販売終了後7年間」となる2025年10月までメーカー修理対応を延長するという、極めて異例の措置を取ることにしました。ただし、本来のサポート期間が終了する2020年11月以降は、部品の在庫状況によっては修理ができなくなる可能性もあるとも告知されています。