アメリカ財務省(ワシントンDC)と韓国外交部(日本の外務省に相当、ソウル特別市鍾路区)は2日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への経済制裁の一環として、高麗航空(JS=KOR、平壌市中区)の主要機材について自国領土及び米国海外領・自由連合国家への乗り入れを禁止するとともに、高麗航空自体についても自国市民・自国籍企業との金融取引を禁止するリストに加えると発表しました。これにより、アメリカ・韓国のパスポートを持っている人は高麗航空のすべての定期便・チャーター便に搭乗することができなくなりました。
さらに、全世界のクレジットカード決済もVISA(サンフランシスコ、NYSE上場)、MasterCard(ニューヨーク、NYSE上場)、AMEX(ニューヨーク、NYSE上場)、そしてダイナースクラブを傘下に持つディスカバー(イリノイ州デュページ郡)と米国籍企業がブランドの多くを掌握しているため、アメリカ以外の国に住むクレジットカードホルダーもこれらのカードで高麗航空の航空券購入代金を決済することが事実上できなくなる可能性があります。
北朝鮮は核拡散防止条約(NPT)2条で国連安全保障理事会常任理事5カ国(アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国)以外の国には禁止となっている核兵器の製造を行い、2003年にはNPT脱退を宣言、包括的核実験禁止条約(CTBT)も無視して核実験を繰り返すなど核武力を着々と充実させています。今回の制裁は、高麗航空が旅客機の貨物室や貨物専用機イリューシン76などを使い、朝鮮人民軍(陸軍)で使う核搭載可能なミサイルの部品を運ぶ可能性を封じる狙いで実施されるものです。
高麗航空は北朝鮮へ空路で入国する外国人のほとんどを運んでおり、韓国系米国市民や韓国籍を選択した在日コリアンが今後、観光やビジネスなどで北朝鮮へ出入国することはできなくなったも同然です。在日コリアンの中には韓国国籍を選択していながら朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会:東京都千代田区)会員という方もおり、そのようなケースでは北朝鮮での商談ができず、相手にわざわざ中国側(遼寧省丹東市)へ出てきてもらわなければならなくなるなど深刻な影響が予想されます。