2014年4月3日木曜日

JRの途中下車制度を正しく理解せよ

JR東日本(東京都渋谷区、東証1部上場)は、4月1日付で大都市近郊区間の制度を改めました。ICカード『Suica』の利用できる範囲を拡大することに合わせた措置で、これにより、旧国鉄はおろか明治の官鉄時代から維持されてきた途中下車制度が全面的に廃止されるというとんでもないエイプリルフールが飛び交いました。

JR6社のうち、大都市近郊区間制度を導入しているのは東日本、東海(名古屋市、東証1部上場)、西日本(大阪市、東証1部上場)、九州(福岡市)の4社です。このうち、最も長い距離を抱える東日本が制度を改定したために、他社も同様の措置を取るという誤解がなされたという訳です。


今回の改定では、韮崎駅(山梨県韮崎市)から先の中央本線が東京近郊区間に組み込まれ、松本駅(長野県松本市)までの主要駅でSuicaが使えるようになります。しかし、これまで可能だった松本駅から東京や関東各地への普通乗車券では、今後一切途中下車ができなくなり、なおかつ切符は発売当日限り有効となるのです。新宿駅(東京都新宿区)で特急スーパーあずさ号と成田エクスプレス号を乗り継いで成田空港へ向かう国際線航空便の乗客が、乗り継ぎ時間の間に外へ出て食事をしたり、買い物をすることもできなくなってしまいます。どうしても新宿でブレイキングタイムを取りたければ、アルピコ交通(長野県松本市)の高速バスで向かうのが現実的な選択肢となります。

既存の東京近郊区間も含めると、最高で常磐線のいわき駅(福島県いわき市)から松本駅まで、即ち東北の端っこから関東地方を縦断して甲信越に至るなんと455kmの距離が大都市近郊区間であることを理由に途中下車不可、片道乗車券の有効期間1日限りとなってしまう、実にとんでもない計算です。

しかし、JR各社の旅客営業規則上は、大都市近郊区間とそれ以外の区間に跨って片道101km以上の距離を乗る普通乗車券は有効期間の範囲内、かつ経路上で戻らないことを条件に途中下車が認められています。ですから、松本駅の1つ先のJR大糸線北松本駅(長野県松本市)から、成田空港駅までの切符を購入すれば、近郊区間内にあるはずの新宿駅や東京駅(東京都千代田区)でも途中下車ができるのです。

また、東海道本線の熱海駅(静岡県熱海市)と函南駅(静岡県函南町)の間はICカードが一切使えません。即ち切符を購入するしかなく、この区間を越えて、例えば東京~三島(静岡県三島市)間を在来線の普通列車で行くのなら、途中の横浜駅や小田原駅で有人改札に申し出れば、改札を出ることができます。

極端な例では、小田急電鉄(東京都新宿区、東証1部上場)とJR東海管内の主要駅を1枚の連絡切符で乗り継ぐ場合も、小田原駅(神奈川県小田原市)または松田駅(神奈川県松田町)のどちらかを挟んだ乗車距離が合計101km以上あれば、JR線、小田急線のどの駅でも途中下車ができるという平成の今では信じられないケースが存在します。小田急電鉄本社のお客さまセンターによりますと、JR線直通の特急ロマンスカーあさぎり号の切符を発売するためにある制度で、「乗り換え駅から先のJR線単独で」101km以上ではないという、特別な規定になっているとのことです。

例外は特別企画乗車券(トクトクきっぷ)で、毎年学校の休みに合わせて発売される『青春18きっぷ』は、普通・快速列車を利用することを条件にJR6社のすべての駅で自由に改札を出ることができます