2009年2月11日水曜日

パナソニック駐在員の家族、一斉帰国へ

 電機メーカー日本最大手のパナソニック(旧社名:松下電器産業 大阪府門真市、東証1部上場)が、欧米以外の第三世界に駐在している社員の家族を一斉に帰国させる指示をしていたことが明らかになりました。時事通信が中国・上海発で報じたものです。

 パナソニック本社の指示によりますと、欧米とオセアニア、それにシンガポールを除く第三世界に家族ぐるみで駐在している社員については、今年の9月30日までに社員本人だけを残して、それ以外の家族全員を日本に戻させます。交代など新たな駐在員が派遣される場合でも、単身赴任を義務付け、家族の同行は認めません。
 理由について、パナソニック本社広報グループでは「新型インフルエンザの大流行に備えた予防的措置で、経費削減とは無関係」と説明していますが、上海のある日系企業の駐在員は「経費削減の側面が大きいのでは? パナソニックさんは3月期決算で3,000億円以上の大赤字を出すらしいし」と述べているそうです。


 前記事「駐在員の帰任・交代、相次ぐ」の最後に、

「日本の年度替りとなる4月には、さらに多くのベテラン駐在員が帰任・交代となりそうな勢いです」

と書きましたが、駐在員本人以上にかかる家族の在留経費負担が、会社にとって深刻だというのを物語っています。
 パナソニックの現地法人はタイだけでも11社あり、日本人駐在員とその家族は1,000人を軽く超えます。それら家族が全員帰国すると、新たなコンドミニアムを確保するにしても、「スタジオ」と呼ばれるワンルームタイプの部屋に駐在員本人だけが住めばOKなので、住居手当を半分以下、家族手当は事実上ゼロか必要最低限にできます。
 万が一鳥インフルエンザの大流行があっても、バンコクから日本への航空便は毎日5,000人近い輸送力があり、バンコク経由で帰らなければならないラオスやカンボジア、ミャンマーからの帰国者が殺到したとしても、駐在員本人だけなら1週間以内で緊急帰国を完了させることができます。

 それでも、スクンビットの駐在員社会に与える影響は深刻でしょう。宅配弁当の最大の顧客は駐在員家族。それが一斉に帰ってしまうのですから減収、淘汰は避けられません。
 泰日協会学校(日本人学校)も生徒数の激減が予想されます。今年は初の分校となるシラーチャレンチャバン校(チョンブリ県シラーチャ郡)の開校を控えていますが、いきなり初年度からつまずく格好。
 一方、JALとANAはタイからの駐在員家族の帰国がかなりの数に上ると見て、バンコク発日本行きの片道航空券を購入した人に、超過手荷物料金を無料にするキャンペーンを行っています。ANAですと、エコノミークラスは20kg、ビジネスクラスは30kgまでの超過手荷物料金が無料。所定の無料手荷物許容量と合わせて、エコノミークラスなら40kg、AMCプラチナ以上のプレミアカスタマーがビジネスクラスをご利用なら、なんと最大80kgまでの荷物が無料!! 帰国を予定されているパナソニック駐在員のご家族にも、多数ご利用いただきたいとのことです。
 そして、最も大きいのは日系の不動産屋さん。家族向けの大型コンドミニアムの供給がだぶつき、半面「スタジオ」や1LDKなど、中・小型のコンドミニアムは激しい争奪戦になることがほぼ確実な展開。いい物件は早急に押さえられてしまいそうです。

 Traveler's Supportasia常連投稿者のガダルカナル・関所さん(プラナコン区)は、

「ひとつの時代の終焉だ。もはや駐在員家庭だからといって海外での優雅な生活が保障されるわけではない。我々年金組も人のことは言えないけど、これからますます厳しい方向へ向かうのではないか」

と述べました。