2007年10月28日日曜日

ビザ延長拒否を悲観、邦人男性が自決

 25日朝、チョンブリ県シラーチャ郡の住宅から191番通報があり、駆けつけたレンチャバン警察署の職員が、この家に住む日本人男性(85)の遺体を発見しました。遺体の胸に刃渡り約20cmの包丁が突き刺さっており、自殺と見て調べています。

 調べによりますと、男性は日本の大手民鉄(「世界日報」には電器メーカーという記述がありました)のエンジニアを経て、1995年頃に来タイ。シラーチャ市内で幼稚園を経営する女性と知り合いました。その後、幼稚園の経営にかかわるようになり、この女性を内縁の妻として、ノンイミグラントO(結婚)ビザを取得、昨年まではスムーズに延長されていました。
 10月24日水曜日。今年も在留許可期限が迫り、レンチャバン市の移民庁現地事務所を訪れてビザの延長を申請します。ところが、男性は今年から導入された結婚資格者のビザ延長要件を知らず、「定職または本国からの定期送金が証明できない」という理由で、延長を拒否されてしまいます。幼稚園が閉園し、定職がなくなっていたのです。
 男性は、これによって直ちにビザが取り消され、摘発、強制送還になると思い違いをし、「強制送還になるくらいならタイで死ぬのが本望」と勝手に判断。深夜、家族が寝静まるのを待って、台所から包丁を持ち出して自分の胸を一突きしたそうです。

 Traveler's Supportasiaでは、ノンイミグラントビザの問題を機会ある度に取り上げてきました。ビザ関連の記事をチェックされている読者の皆さんなら、彼のように自殺するとまではまずあり得ないでしょうし、そういうことを思う以前に別の対策を考えて行動されているはずです。特にノンイミグラントOビザで在留されている方は、正規観光ビザとビザランの繰り返しで在留している沈没組と違って、それなりの条件を満たしている方なんですから尚更、自分のビザの条件が気になると思います。だからこそ、ビザの条件維持は抜かりなく行うべきで、そのためには日頃からの研究が欠かせません。
 自分のビザの条件維持を怠った結果、延長できないとわかったから後先も考えずに回線切って首吊って、という行動はあまりにも短絡的です。残される家族や、迷惑を蒙る後続のロングステイヤーのことまで考えた上での行動なんですか? ビザ制度の改定で、移民庁に殺されたという同情の声もあるでしょうがそれは通用しません。自分自身のリスク管理をきっちりしなかったために追い詰められたのであって、この男性と、ご遺族がもしいらっしゃるのなら大変申し訳ないのですが、非難されたとしても文句を言えないでしょう。

 ビザ延長が拒否されたからといって、直ちにビザが取り消されたり、摘発の対象になったりすることはありません(前記事「ビザが取り消されるのはどんな時」参照)有効な在留資格に基づいて入国済みなんですから、在留許可期限が残っていれば、ビザはその期限日までは有効ですし、もし期限が迫ってから延長に行って拒否された場合でも、担当官の判断で「トランジットTS」という、7日間の在留許可が与えられます。最悪、トランジットTSの有効期間中にビザ再取得の旅程を考えるか、荷物をまとめて本帰国するか、もし遅れるようでもビザランをして30日の在留許可は得られますから、その期間中に選択をすればいい訳です。

 また、ノンイミグラントO(結婚)ビザには最近、「本国からの定期送金かタイ国内での就労で40,000Bt.以上の月収を得ていること」という延長要件を出すところが出始めています。特に、パタヤやプーケット、サムイなどリゾート地に沈没しているファランを狙い撃ちにした規制のようですが、家族たるタイ人も養えないノンイミ持ちからは余計にビザ代を取ろうという、移民庁の強硬姿勢が如実に表れています。
 管理者ふくちゃんのある知り合いは、最近ノンイミグラントO(結婚)を取ったのですが延長ができず、3ヶ月おきに在ビエンチャンタイ大使館(ラオス)へ再取得に行っているという例を見ています。日本発行のクレジットカードを持っていていつでも資金を引き出せるにもかかわらず延長拒否ですから、たまったもんじゃありません。

 自殺した男性の場合は、ノンイミグラントO-Aという選択肢もあったのですがとても80万Bt.の貯蓄どころではなかったようです。