2006年11月15日水曜日

ヤラー駅前のイスラム料理屋

 11月6日、タイからマレーシアに行く途中、国境近くのヤラーというところで、乗換えのため列車を降りた。直行便に乗り遅れたからであった(前記事「スンガイコロクへもう1本の列車」参照)
 国境の街スンガイコロクまでの列車を待つのに、待ち時間が1時間程あった。駅にいてもつまらないので、少し歩いて食事をしよう、ということになった。ハジャイとか、ヤラーとかでは最近イスラム過激派の動きが活発化していると聞いていたので、余り遠くまで行く気はなかった。


 最近の世界の動向の予測を見ると、早ければ、21世紀の半ばにはイスラム教が世界最大の宗教になりそうだという。日本やアメリカでも,イスラム教徒は増えているそうだ。欧米人に聞くと、欧米諸国でも、イスラムや、ヒンドゥー教、仏教へと改宗する人が増えていると聞く。そうなると、ヒンドゥー、仏教系と、キリスト教系がほぼ同数、イスラムが少し抜きん出て最大宗教になりそうだという。アラブ、西アジア、アフリカ、インドネシアだけでも相当いる。
 一方、シャーマニズム的な宗教、ボン教、五大陸の先住民の宗教も、アイヌの人々や華僑の道教も一まとめのグループにすると、ヒンドウー,仏教系のグループ,キリスト教系のグループと同数に近くなるそうだ。日本の神道も此処に入るのかな? 道教はヒンドゥー、仏教系かな?
 一般に、仏教が最も寛容で穏やか、知的で、しかも自由だが、シャーマニズム的なものも、自然に沿って生きる平和なあり方だと思う。共通しているのは,敏感で、地球に優しいということだ。
 タイという国では、仏教、精霊信仰、ヒンドゥー教、道教(タオイズム)とが、お互いに相互依存で旨く調和している。そこであらゆる矛盾が緩和されてしまうのだ。まさに、マイ・ペン・ライ。イスラムだけが緊張度が高く、今、悩みの種。タイ王室が率先して打開策を見つけようとしている。
 ある種の「いい加減さ」と言ってもいいが、それがこの国の豊かな文化となっているところが,ユニーク。時々、そのいい加減さがネガティブに働くことも皆無とはいえないが、どこに行っても、余り「力み」がない。緊張度が柔らかい。見方を変えれば,「絶妙ないい加減さ」、とも言えるが、それは、人々の「耳の光」、理解力に負っている。それ故、スコタイ伝統の微笑みの国になって行く。自然に任せれば旨くいく、タオに返せば旨くいく。老子の教えも浸透しているのだ。

 そろそろ、本題に入ろうか。

 ハジャイからマレーシアにかけてのタイ南部は9割の人々がイスラム教徒。そのせいか、街は綺麗に整っている。ゴミもない。それでも、イスラム教徒はタイ全体の1割だ。
 駅の構内、駅周辺には、軍隊がマシンガンや、催涙弾を射つ銃を持って警戒に当たっている。兵隊さん達はニコニコしながら相棒達とおしゃべりしている。暇で退屈そう。余り緊張感はないようだ。まず、大丈夫だろう。いきなりドカーンでは堪らない。カンボジアもイラクもアフガンもイスラエルも御免蒙りたい。豊かなものは、喧嘩をしないのだ。クワバラ、クワバラ(日本の魔除けのマントラ)。
 天気はピーカン,空は真っ青。空気がきれいなのだ。お陰で暑い。11月なのに33〜4度位はあるだろう。30度を切ると、タイでは涼しいと言える。何時もなら、もう涼しくなってる筈が、今年は、どういう訳か,未だに暑い。

 駅の近くの食堂にふらりと入った。扇風機が何台もガンガン回っていて,涼しい。店は、奇麗で、明るく、イスラムの女性達が働いている。椅子はタンジェリン、オレンジ色。味付けも、イスラム風なのかもしれない。当然,アルコールも豚肉もない。鍋が沢山並んでいて、その中から、好きなものを選んで注文する。暑いのでエビのココナツカレーにしようと思ったが、アサリがうまそうだったので、それと味付け卵、ご飯、付け合わせのサラダを注文。列車の中では,朝食はパンとコーヒーだけだったのでお腹がすいていた。
 アサリの料理は、「パット・ホイ・ライ」、アサリをバジルと唐辛子や他のスパイスと炒めたもの。味付け卵は、ゆで卵を甘辛のたれで煮込んだもの。一寸小腹がすいたときに摘むと旨い。「パット・ホイ・ライ」は私の好物。月に1〜2度は食べる。腎臓にも肝臓にもいいとされている。辛みと旨味で,味付けも抜群の出来。バジルが沢山使われていて香りが素晴らしい。カリーもそうだが、料理は味も勿論だが、香りも命。日本でも、コーヒー屋、うなぎ屋、カレーの店等は香りが命。香りがいいと、食欲も倍増する。消化にもいいのだ。
 南アジアでは、ミントをレモングラス同様、サラダにも料理にも使うのだが、これも胃腸にはいい薬になっているようだ。時には,ミントをボールに山盛りにして,ライムを絞り、ヨーグルトかドレッシングをかけて食べてしまう。おかげで、ほとんど薬を飲まずに生きてこれている。

 タイやマレーシア、華僑の店、インドの食堂では、よくタンジェリン、オレンジ色の椅子を使う。大抵は、プラスチックの安物だ。だが、食欲や肉体的なエネルギーが活動する色なのだそうだ。ハートにも共鳴し、楽しく、美味しく、沢山食べてもらおうという配慮のようだ。もっとも、何でもかんでもオレンジ色にしたら、うんざりして逆効果になるのは必定だが…
 テーブルクロスは、高級レストランでは真っ白の場合もあるが、家庭や食堂あたりでは、チェックやクロスのデザインを良く見る。それらの事、全てが美味しさを演出している。

 日本の一般的な標準からすると、かなり辛いかもしれないが、タイでは先ず普通。丁度良い味付け。暑い国では,少々辛くないと旨くないし、また唐辛子は殺菌作用が強く、バイタリティも必要だからだ。少なくとも,食中毒を防げる万能スパイスだ。唐辛子がないと,元気が萎んでしまう。卵の方は、コクのある甘みと、一寸の辛みが利いて、アサリ料理のカウンターになって,グッド・チョイス。
 アジアが素晴らしいのは、何といっても,飯がうまい事。牛肉は輸入のオーストラリアものが主なのだが、何といっても,国内産の野菜、魚、鳥肉、スパイスと言った素材がいい。特に、インドと並んで、野菜の力は凄い。気候の所為だろうか? 土地がカルシウム土壌だからとも聞いた事がある。野菜に力がある。野菜好きには堪らない。
 知り合いのイタリア人に言わせると、タイのスパイスと素材を使えば、イタリア料理はもっとうまくなる、と言う。タイ、マレー、インドネシア、インド、何処で食べても旨い。飲茶もうまいし、海南、広東,四川といった中華だって旨い。ペナンには500円以下で、フカヒレが食べられる店がある。何時か紹介しよう。
 ざるそばや、天ぷら、唐揚げ、豆腐料理と言った日本料理もよく頂くが、イスラム、イタリア、フランス料理も頂く。もっとも余り高価なものは遠慮している。色々、食べれば何でも美味しい。

 一寸脱線するが、カオサンにある日本レストラン、「竹亭」で美味しいものを発見。3cm角くらいに切った絹濾し豆腐に、衣をつけて天ぷらにしたものだ。「揚げ豆腐」という。カラッと揚がった「揚げ豆腐」、これは旨い。外側はカリッとしていて、中身は、熱い絹濾し豆腐の淡白な味と柔らかさ、そして、だしの旨味。そのコントラストがいい。そこが粋ってもんだ。エアコンの効いた畳の部屋で、たまにビールでも料理と一緒に頂くと本当に旨い。ハイネケンなんか旨いね。テレビで相撲でもやっていたら、これは極楽というものだ。
 昆布と鰹節のだし醤油、大根おろし、ネギのみじん切り、擦った炒り胡麻、ショウガをおろしたもの、少々の唐辛子と、薬味の方が大変だ。
 タイでも日本の「オツ」な味が浸透し始めて、タイ人たちには日本料理がブームになっている。日本レストランのお客のほぼ半分がタイ人のお客。もともと、食い道楽な人が多い。 これは,長く続きそうだ。平和はいいね。これ以上のものはない。

(管理者ふくちゃんから)
 副管理者fortunesawadaさんのBlogとの連動で、かなりのボリュームになりましたがいかがでしたでしょうか?
 私も同席させていただいたのですが、これだけの量がわずか30Bt.で楽しめたんです。危険承知で何を今更、というツッコミもあるでしょうけど、それはそれで美味しく頂きました。タイ南部に平和が戻ったら、皆さんも1度いかがでしょうか?