2021年6月16日水曜日

ニッポン放送も方針転換!!中波民放ラジオ『終わりの始まり』

日本民間放送連盟ラジオ委員会(東京都港区)加盟のAM事業者47社で構成する『ワイド>FM対応端末普及を目指す連絡会』は、この度参加事業者の大半が2028年(令和10年)までにFM波へ事業の軸足を移し、AM(中波)放送を将来的に終了する方向で一致したと発表しました。

連絡会幹事局のTBSラジオ(東京都港区)、文化放送(JOQR:東京都港区)とニッポン放送(JOLF=HappyFM93:東京都千代田区)によりますと、日本国内のAM民放47局中、2028年以降もAM波を中心に事業を展開する方針なのは北海道放送(HBCラジオ:札幌市中央区、札幌証取上場)、STVラジオ(札幌市中央区)、秋田放送(ABS:秋田市)の北日本に位置する3局だけで、他の44局はAM放送を縮小、ないしは終了させる方針です。

1951年(昭和26年)の中部日本放送(現・CBCラジオ、名古屋市中区)の開局以来、10年余りで民放AMラジオ48局(連絡会参加47局+日本短波放送)が出来ました。1970年(昭和45年)からはFMの県域民放局が次々と開局。しかし、1970年代以降の国内AMラジオは局によって韓国・北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)・中国といった近隣諸国の放送との混信が酷くなってきました。1990年代に混信対策事業として一部でFM波による中継局建設が認められたのを契機に、2011年(平成23年)の地上アナログテレビ終了によって本格的にAMラジオのFM移行が議論されるようになりました。

こうして、2014年12月1日の北日本放送(KNB:富山市)と南海放送(RNB=Fnam:愛媛県松山市)を皮切りにアナログテレビの第1チャンネルとして使われていた90MHz帯がAM放送局の補完波、通称『ワイドFM』として順次開局。2020年3月16日開局のRFラジオ日本(JORF:横浜市中区)を最後に連絡会参加47局のワイドFMがすべて出揃いました。

しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う緊急事態宣言と、それに伴う経済の落ち込みでラジオ局の営業収入が大幅に減少。設備の維持コストや老朽化に伴う更新の問題に加えて、インターネットの進化に伴う”通信と放送の融合”によって圧倒的に低コストなネット配信『radiko』が代替の役割を果たしきれる可能性が出てきたなど技術的な要因もあり、2019年以降、AM放送撤退を真剣に検討する局が出始めます。

茨城放送(IBS=LuckyFM:茨城県水戸市)は、ワイドFM化を契機にやはり関東近郊にある後発局FM富士(JOCV:山梨県甲府市)の歩みを研究して、東京など南関東1都3県へ向けたプレゼンスの強化を図っており、都内では受信状態が安定しないAM放送を一刻でも早く止めたい意向とされます。栃木放送(CRT-FM:栃木県宇都宮市)も同様。また中波での厳しい外国波混信対策が不要になる北日本放送や福井放送(FBC:福井市)といった日本海側の放送局は早々と賛同を決定しました。キー局中最後までAM波堅持を主張し、AM送信所(千葉県木更津市)の電気設備更新工事を進めていたニッポン放送や、送信機の更新を行ったばかりだったCBCラジオもここへ来て、長期的なAM維持を断念せざるを得ない状況に追い込まれました。