日本民間放送連盟ラジオ委員会(東京都港区)加盟のAM事業者47社で構成する『ワイドFM対応端末普及を目指す連絡会』は、この度参加事業者の大半が2028年(令和10年)までにFM波へ事業の軸足を移し、AM(中波)放送を将来的に終了する方向で一致したと発表しました。
具体的には、2023年(令和5年)11月に予定されている次回の無線局免許更新の際に、一部の局がAMを「長期停波」とする実証実験を行います。その後、2028年(令和10年)の次々回の無線局免許更新で、次のいずれかの選択をすることになります。
①AMとワイドFMの主従関係を入れ替える
現在は、AM(中波)が親局で、ワイドFMはあくまでも補完中継局という位置付けです。これを逆にします。即ち、ワイドFMを親局に振り替え、AMが補完局として存続する訳です。この際、AMの中継局がある事業者では、中継局をFMに切り替えるか廃局して親局だけを残すことになります。
②すべてのAM無線局免許を返納し、FMに一本化する
最も多くの局が採るとみられる対応がこれです。首都圏近郊の茨城放送、栃木放送はもちろんのこと、積極的な技術開発とともにFM補完中継局を整備してきた山口放送(KRYラジオ:山口県周南市)はAM全面撤退に乗り気。東名阪の3大都市圏でも元来ラジオ専業の文化放送、RFラジオ日本、ラジオ大阪(OBC:大阪市港区)に加えて、TBSラジオも事実上の「旗振り役」として積極的に検討しているとみられています。
③AM中継局のみ無線局免許を返納する
なお、中継局のみAM放送を廃止し、親局は存続とする選択も十分考えられます。福井放送は、小電力の中継局2カ所を実証実験で停波する意向です。
④AM放送とワイドFMを現状のまま併存する
親局はあくまでAMで、ワイドFMは親局のある大都市周辺のみとし、中継局も含め現状通りAMを中心に事業を継続するもので、HBCラジオ、STVラジオ、ABSラジオの3局がこの形態を取ります。
「AM停波の前提となる第1次実証実験(2023年)には参加しない。よって(第2次実証実験が行われるであろう)2025年まではAMが停波するエリアはない」
また、ニッポン放送とラジオ大阪、和歌山放送(WBS:和歌山市)は現在もAMステレオ放送を実施しており、ステレオ対応の送信機をこのまま使い続けて2023年に親局停波というのも出来ないことはありませんが、今回の実証試験では少なくとも2028年までは非常災害などの際に、何時でもAM放送を再開できる状況を整えておかなければならないといい、 これらの局では1992年以前と同じモノフォニック(モノラル)対応で送信機を更新しなければなりません。
実証試験の開始までもうそんなに時間はありません。どこの局が停波し、どこが存続を決めるのか。リスナーにとって、今後2年半は期待と不安の両面が募る時間となりそうです。