2020年6月1日月曜日

北神急行が神戸市営地下鉄に編入!前代未聞の公営化決行

北神急行電鉄(神戸市北区)は、1988年(昭和63年)から営業を続けてきた自社線(谷上~新神戸)の全設備と営業権を地元の神戸市に譲渡して事業活動を終了しました。これにより、北神急行線は神戸市営地下鉄北神線として生まれ変わりました。

日本で純民間資本で建設された私鉄が、国に買収されるのは鉄道国有法(1906=明治39年法律17号)など多くの例がありますが、地方公営企業に引き取られるのは路面電車を除けば史上初めてです。BOT方式PFI(建設・運営・譲渡)適用とみなした場合、公共セクターへの譲渡まで行ったのも日本では例がありません。

北神急行線は、神戸電鉄(神戸市兵庫区、東証1部上場)が運営している有馬・三田線(湊川~三田・有馬温泉)の谷上駅(神戸市北区)から分かれて都心のJR新神戸駅(神戸市中央区)の間をトンネルで短絡する路線として、神鉄の親会社の阪急電鉄(大阪市北区、日本民営鉄道協会加盟)主導で計画されました。

1970年代には北神急行の鉄道トンネルと並行して、神戸市が自動車用の『新神戸トンネル』を掘っており、谷上駅と三宮の間に神戸電鉄バス(現・阪急バス=大阪府豊中市)の[6](神戸駅~有馬温泉)[151](神戸駅~谷上駅)と神姫バス(兵庫県姫路市、東証2部上場)の[14](神戸駅~三田駅)、隣の箕谷駅との間は神戸市バス[64](三宮~神戸北町)が開通し神鉄の乗客を奪い始めていました。阪急は特に市バス[64]を鉄道先行と考え、谷上駅とJR新神戸駅の間にほぼ一直線のトンネルを掘って、既に建設が始まっていた神戸市営地下鉄西神・山手線に接続させ相互直通運転を行うという事業構想を立て、1979年(昭和54年)に北神急行を設立。日本鉄道建設公団(現:鉄道・運輸機構)と連携して工事を進め、1984年(昭和59年)にはトンネルを貫通させ、1988年(昭和63年)4月2日に正式に開通、営業を開始しました。

しかし、鉄建公団に対して25年計画で工事費を返済する必要があったことから運賃を高く設定しなければならず、加えて新神戸駅以遠は神戸市営という別の事業者になるため市営の乗車料金(運賃)も合算されたので、谷上と三ノ宮の間は営業距離で8.8Kmしかないのに、開業当時でなんと590円、値下げされた後も550円という高い料金設定になっていました。一方、神戸市バス[64]は箕谷駅まで450円、阪急バス[6]も谷上駅まで490円と北神急行よりも安い運賃設定をし、市営だけで使える『敬老パス』(シルバーパス)の利用者も多かったため乗客の鉄道への移行が進まない状態に陥ります。このため債務返済のメドが立たなくなり、2001年(平成13年)、北神急行は設備を神戸高速鉄道(神戸市兵庫区)に譲渡して上下分離の事業者になります。それでも収支の改善が進まず、270億円もの欠損金(累積赤字)を抱えたまま2年後の2022年にも北神急行関連の債務を引き継がなければならなくなっていた阪急阪神ホールディングス(大阪市北区、東証1部上場)は、久元喜造市長に北神急行の今後について協議を要請します。久元市長は神戸市北区の活性化を進める狙いで北神急行の資産を引き取り、市営地下鉄に一体化することを提案。2019年3月に基本合意を取りまとめ、北神急行の現場社員を神鉄に移籍させた上で神鉄が北神線区間および谷上駅の運営を市から受託するという移行措置を準備してきました。

乗車料金は、西神・山手線の3区相当にあたる『北神1区』が設定され、谷上と新神戸の間は280円と従来より90円引き下げられました。新神戸駅以遠では従来連絡運賃だったのが神戸市営地下鉄1本になるにあたり、「新神戸駅を基準にした区間料金+北神1区料金」が初乗り(1区)では同額、2区以遠でも従来の地下鉄料金より30円~40円のアップに留まるように見直されました。この結果、谷上と三ノ宮の間は280円、神鉄湊川駅(神戸市兵庫区)に程近い湊川公園駅との間も、従来の610円が310円とそれぞれほぼ半額に引き下げられました。三宮と有馬温泉の間も、従来の950円がバスよりも安い680円に値下げされ、乗客の鉄道への転移が一気に進むのではないかと期待されています。

なおPiTaPa、ICOCAなど交通系ICカードは従来通り使用できるほか、谷上駅ではスルっとKANSAI磁気カードも当分の間自動券売機・自動精算機で使用できます。New Uラインカード、敬老パス、福祉乗車証も北神線で使えるようになります。