2020年3月15日日曜日

伊勢丹バンコク閉店へ…波乱万丈の業歴28年で幕

三越伊勢丹ホールディングス(東京都新宿区、東証1部上場)は、旧伊勢丹時代の1992年(平成4年)から営業していた伊勢丹バンコク(パトゥムワン区)を8月31日(月)限りで閉店する方針を決めました。

時事通信が14日深夜にHPで報じ、日本経済新聞(電子版)も追随しました。明日16日にも正式に発表されます。

1987年(昭和62年)、旧伊勢丹は香港を皮切りに海外進出をスタートし、シンガポールやクアラルンプール、高雄(台湾)に次々と店舗を開設、東南アジアで大攻勢をかけました。その一環として伊勢丹はタイへの進出を決め、1992年(平成4年)4月にワールドトレードセンター(現・セントラルワールド)の北側に入居しオープンしました。当時はバンコクだけで日系百貨店が4ブランド(東急百貨店、そごう=現・そごう西武、大丸=現・大丸松坂屋百貨店)ありましたが、アジア通貨危機直後に大丸(現・BigCラチャダムリ店)とそごう(現・アマリンプラザ)が閉店しラチャプラソン地区唯一の日系デパートとなった後は、タイ有数の高級デパートとして地位を固めてきました。

2010年(平成22年)のUDD軍戦乱、2014年のバンコクシャットダウンといった市民生活の混乱も乗り越え、JALUX(東京都港区、東証1部上場)との提携により日系飲食店を総入れ替えするなどし営業を続けてきましたが、一部の報道では2010年代には慢性赤字に陥っていたといい、三越伊勢丹は東南アジア事業をシンガポールとKLに絞り込むことにして、バンコクからの撤退のタイミングを探るようになりました。

そして、2020年に入ってからの新型コロナウイルス感染症(『COVID-19』)による世界経済の急失速で売り上げが大きく落ち込み、三越伊勢丹側が撤退するなら今がベストと判断。大家のセントラルパッタナ(パトゥムワン区、SET上場)も9月以降の賃貸契約を更新しないと伝達した模様です。

伊勢丹バンコクの閉鎖で、バンコクに残る日系百貨店はタイ東急(パトゥムワン区)とサイアム髙島屋(クロンサン区)の2ブランドとなります。

なお伊勢丹バンコクに入居するテナントのうち、紀伊国屋書店バンコク本店は賃貸契約が伊勢丹とは別のため存続するほか、近隣のサイアムパラゴン店も残ります。6階の飲食店については代替地探しを迫られそうです。