2019年1月9日水曜日

コスト滞納で限界!?インドネシアエアアジアX全定期路線中止へ

インドネシアエアアジアX(XT=INX、ジャカルタ)は、唯一残っていた定期路線である成田~デンパサール(グラライ)線を、成田13日発のフライトを持って取りやめます。今後は、ハッジフライト(メッカ巡礼に向かうイスラム教徒を狙った団体専用便)を中心としたチャーター便専門の航空会社に転換するとしていますが、AirAsiaグループの航空会社で定期路線がすべてなくなるのは、初代エアアジアジャパン(JW=WAJ、現・バニラエア:JW=VNL)と旧フィリピンエアアジア(PQ=APG、現・エアアジアフィリピン:Z2=EZD)に次いで3社目です。

(画像:成田第2ターミナルの保安検査場で、職員向けにインドネシアエアアジアX402便の最終運航日との通達がされていた。明日の404便で完全撤退となる)

《デンパサール発1月13日、成田発1月14日のフライトを持って取りやめ》
XT403 DPS0125~NRT0905 月・土曜運航
XT401 DPS2305~NRT0720+1 金・日を除く週5便
XT402 NRT0835~DPS1540 月・土を除く週5日運航
XT404 NRT1050~DPS1755 月・土曜運航

(機材はエアバス333 プレミアムフラットベッド=ビジネスクラス12席、レギュラーシート=エコノミークラス365席)

この件について時事通信と読売新聞は8日、

「インドネシアエアアジアXが成田国際空港会社(NAA:千葉県成田市)から請求されていた空港使用料を支払っていないことが判明、滞納額は累積で数億円単位」

と報じました。

ここで「空港使用料」と言われているのは、日本を出発する乗客が航空会社を通じて払う『旅客施設使用料(PSFC)』ではなく、航空会社が運航コストの一つとして到着地の空港に払う『着陸料』『駐機料』と呼ばれるものです。

成田空港会社では、着陸料と停留料(駐機料)の他に『手荷物取扱施設使用料』『搭乗橋使用料』の計4種類のコストが定められており、到着便を運航する航空会社はこのすべてを支払わなければなりません。しかし、インドネシアエアアジアXは少なくとも成田~ジャカルタ(スカルノハッタ)線就航で1日2便分を払うこととなった2018年5月以降の着陸料を納めていなかった模様。

NAAのHPによると、エアバス333クラスの機材を使った場合の着陸コストは1便飛ばすごとに54万5600円(手荷物施設および搭乗橋使用料に対する消費税込み)と規定されています。またNAAでは少なくとも2013年以降、新規航空会社や成田空港との間に直行便がなかった都市などを対象とした着陸料の割引制度が設けられている(『成田ハブ化促進インセンティブ』)といい、今回のINXは、このインセンティブ制度の解釈を誤ったのではないかと分析します。

ジャカルタ、デンパサール共に「直行便がなかった都市」には該当しませんが、INXは「新規航空会社」には該当します。このため、17年5月のデンパサール線就航時は着陸料の割引が効いたものの、18年5月のジャカルタ線就航時に、ジャカルタ線の割引に加えて、デンパサール線の着陸料割引も継続されると思い込んだのではないでしょうか。

INXはNAAに着陸料減額の継続を申し出たところ認められず、2018年5月から9月までは1日あたり108万円(1カ月で3,240万円)かかっていた着陸コストを払えなくなり、9月末でジャカルタ線の運航を取りやめることに。10月以降は1便分の負担に減ったものの、それでも1カ月に1,620万円の費用がかかり、その一方で便を飛ばすということは燃料費や客室・運航乗務員の人件費もかかりますから、当然負担は重くなります。INXは国内線や近距離国際線を運航するインドネシアエアアジア(QZ=AWQ)とも別会社ですので、QZの利益を付け替えることができません。経営陣が期待していた統括会社エアアジアアセアン(ジャカルタ)による立て替え払いも行われていない模様で、INXは単体に巨額の累積赤字を抱えて運転資金にも窮するようになっていた可能性があります。