富士フイルムホールディングス(東京都港区、東証1部上場)と写真用品部門の事業子会社、富士フイルムイメージングシステムズ(東京都港区)は、フィルムカメラ用白黒(モノクロ)フィルム『NEOPAN ACROS(ネオパンアクロス)』を今年10月出荷分限りで全種類廃番にすると発表しました。純正印画紙・現像液も2020年3月までに全種類廃番とし、富士フイルムは白黒フィルム事業を終息。今後は、競合他社が細々と生産を続ける形となります。
日本の写真用ロールフィルムの歴史は、コニカミノルタ(東京都千代田区、東証1部上場)の前身会社『小西六本店』が1929年(昭和4年)に発売した『さくらフヰルム』から始まります。富士フイルムは、その5年後の1934年(昭和9年)にダイセル(大阪市北区、東証1部上場)から分かれて設立されるのと同時にフィルムの生産を始め、1937年(昭和12年)、『富士ネオパンクロマティックフィルム』の名前で初めての写真用ネガロールフィルムを発売しました。
しかし、2000年代以降はデジタルカメラ、スマートフォンの多くの機種に白黒撮影モードが搭載されるようになりました。これによって古くからの愛好家も、そうでない一般消費者も簡単にモノクロ写真を撮れるようになり、逆に「モノクロしか撮れない」フィルムの需要は激減。フィルムを装填できるカメラの製造も急速に縮小して、尚更に売り上げが落ち込んでいきます。
共同通信は、「会社側の説明として年率15~20%のペースで需要が細っていた」と報じ、グローバル展開する大手メーカーによる商業採算ベースでの販売継続は最早限界だと判断した模様。また時事通信の報道によると、既に3月いっぱいで白黒フィルムの製造ラインは止まっていて、現在工場にある在庫が全て出荷されるのが10月頃の予定だといいます。
今後は、サイバーグラフィックス(旧オリエンタル写真工業、東京都千代田区)の『ORIENTALニューシーガル』が国産唯一の白黒ネガフィルムとして販売継続される他、コダック(アメリカ・ロチェスター)の『TX400(旧名トライXパン)』『T-MAX』も日本への供給が続けられます。