2018年4月7日土曜日

「ネオパン」販売終了で写真の一時代が終わる

富士フイルムホールディングス(東京都港区、東証1部上場)と写真用品部門の事業子会社、富士フイルムイメージングシステムズ(東京都港区)は、フィルムカメラ用白黒(モノクロ)フィルム『NEOPAN ACROS(ネオパンアクロス)』を今年10月出荷分限りで全種類廃番にすると発表しました。純正印画紙・現像液も2020年3月までに全種類廃番とし、富士フイルムは白黒フィルム事業を終息。今後は、競合他社が細々と生産を続ける形となります。

日本の写真用ロールフィルムの歴史は、コニカミノルタ(東京都千代田区、東証1部上場)の前身会社小西六本店』が1929年(昭和4年)に発売した『さくらフヰルム』から始まります。富士フイルムは、その5年後の1934年(昭和9年)にダイセル(大阪市北区、東証1部上場)から分かれて設立されるのと同時にフィルムの生産を始め、1937年(昭和12年)、『富士ネオパンクロマティックフィルム』の名前で初めての写真用ネガロールフィルムを発売しました。

戦後は、ネオパンクロマティックを略した『ネオパン』のブランド名が定着。1952年(昭和27年)には、ISO100の標準品として長く親しまれる『ネオパンSS』が発売されます。写真用品に輸入規制が存在しカラーネガフィルムもまだ黎明期だった1960年代には、2018年現在と比べて100倍以上もの本数が出荷されていたといいます。その後、『フジカラーN』などカラーフィルムの普及が進んだことで80年代には町の写真店から白黒フィルムは姿を消し、ヨドバシカメラ(東京都新宿区)など量販店を中心に売られるプロ用商品へと変化していきました。それでも、報道写真・天体写真など白黒が強みを発揮する分野や、卒業アルバムなど白黒に存在価値のある写真制作、あるいは表現手法の一つとして白黒にこだわる写真家といった需要が根強く、2000年(平成12年)にはネオパンSSの後継品として、現行のACROSが投入されていました。

しかし、2000年代以降はデジタルカメラ、スマートフォンの多くの機種に白黒撮影モードが搭載されるようになりました。これによって古くからの愛好家も、そうでない一般消費者も簡単にモノクロ写真を撮れるようになり、逆に「モノクロしか撮れない」フィルムの需要は激減。フィルムを装填できるカメラの製造も急速に縮小して、尚更に売り上げが落ち込んでいきます。

共同通信は、「会社側の説明として年率15~20%のペースで需要が細っていた」と報じ、グローバル展開する大手メーカーによる商業採算ベースでの販売継続は最早限界だと判断した模様。また時事通信の報道によると、既に3月いっぱいで白黒フィルムの製造ラインは止まっていて、現在工場にある在庫が全て出荷されるのが10月頃の予定だといいます。

今後は、サイバーグラフィックス(旧オリエンタル写真工業、東京都千代田区)の『ORIENTALニューシーガル』が国産唯一の白黒ネガフィルムとして販売継続される他、コダック(アメリカ・ロチェスター)の『TX400(旧名トライXパン)』『T-MAX』も日本への供給が続けられます。