Paysafeグループ(イギリス領マン島、ロンドン証取上場)は、子会社が運営している個人向け電子決済サイト『Neteller(ネッテラー)』『Skrill(スクリル)』から日本人顧客を事実上締め出しました。Skrillは日本向けの全サービスを9月30日限りで完全に終了しており、NettelerもオンラインギャンブルやFXブローカーとの取引、デビットカードの取り扱いを終了しています。
Netellerは1999年、Skrillは『Moneybookers(マネーブッカーズ)』の名前で2000年にそれぞれ創業。マン島やケイマン諸島、キプロスなどイギリスの海外領土あるいは元植民地に多いタックスヘイブンを拠点とするオフショアバンクへの送金、FX(外国為替証拠金取引)ブローカーの出入金、ブックメーカーやカジノ・スポーツベッティングといったオンラインギャンブル業者との資金のやり取りなどに利用されてきました。特にSkrillは、前身の名前からもわかるようにギャンブル向けの資金移動に事実上特化したソリューションでした。他方で変わった使い方として、フリーランスの立場で世界を飛び回るノマドワーカーが仕事の売上をNetellerで回収し、生活費や航空券の購入代金に充てるといった例もありました。
しかし、日本では資金決済法(2009=平成21年法律59号)による規制が存在する他、2016年1月からは日本国内の証券会社、FXブローカー全社でマイナンバー(個人番号)の提出が必要となっており、提出を逃れる目的で海外ブローカーを利用しようとする専業トレーダーを捕捉するため、ブローカーと資金のやり取りを行う決済業者がマイナンバーを確認することになりました(国外送金等調書法2条)。
8月11日(木)22時(英国サマータイム14時)をもってNet+カードは使用不可能となり、9月15日(木)からはNetellerを通じたオンラインギャンブル業者との資金のやり取りが禁止されました。さらにNeteller経由の出入金を認めていた多くのFXブローカーが9月30日(金)で対応を終了すると発表し、ごく一部を除いて日本人がNetellerを利用する意味はほぼ失われました。数少ない例外であるノマドワーカーも、この分野で先行するPaypal(アメリカ・サンノゼ、NASDAQ上場)を利用する人が多いといわれています。
一方、Skrillは10月1日付で日本在住者が開設したアカウントをすべて強制閉鎖し、出金が間に合わなかった残高は没収して、日本市場から完全に撤退しました。
ただし、Netellerは日本からの全面撤退はしないと発表。成田空港第1ターミナルにある外貨回収機『Travelers Box』を運営するトラベラーズボックスジャパン(横浜市西区)がNetellerやSkrillへの入金に対応しているためで、今後はTravelers Boxを通じて現金で入金できる(出金は不可)他、3メガバンクなど普通銀行の海外送金を使えばやり取りはできます。Skrillも、来日する外国人利用者にはTravelers Box経由での入金を引き続き受け付けます。