タイ唯一の日本語総合雑誌として、風俗から旅行、オピニオンまで幅広く取り上げ17年に渡り続いてきた月刊『G-DIARY(ジーダイアリー、以下Gダイと略します)』が、今日発売の10月号をもって休刊となります。3代目編集長の西尾康晴さんが、個人と雑誌公式それぞれのFacebookページで明らかにしました。
その後、バックパッカー旅行が下火になるにつれて、徐々にジャーナリズムやオピニオン的な要素が強まっていきます。日本での発表の場が限られるジャーナリスト達に執筆の機会を与えたケースとしては、八木沢高明さん(『毛沢東の旅』、単行本は小学館『マオキッズ-毛沢東のこどもたちを巡る旅-』)や高野秀行さん(『ソマリランドの旅』、単行本は本の雑誌社『謎の独立国家ソマリランド、そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』)らが特集記事で活躍。最終号となる今月号では嵐よういちさんが渾身の寄稿をまとめ上げました(『ジョージアという国を巡った』)。
逆に在タイ日本人が書き手として世に出ていくこともありました。弊誌Traveler's Supportasiaでもご紹介したこともある小寺祐介さんや高田胤臣さんが代表格です。
一方、性風俗関連の記事では『アジアン王国』(大洋図書)など日本発のライバル誌に露出度で劣るものの、現地発でしかできない最新の情報を毎月更新し、風俗攻略の必須アイテムと言われた『最強マップ』と共に男性旅行者の大きな支持を集めました。
しかし、インターネットの普及による雑誌ビジネスの環境変化には抗しきれません。紙媒体の限界はすぐそこまで迫っていたのです。2015年12月、日本での同時印刷を中止したものの、タイでは紙媒体の発行を継続しました(前記事「日本向けGダイアリーが完全電子化!紙は今月がラスト」参照)。これがGダイの媒体寿命を縮めてしまった可能性があります。
紙の雑誌や電子書籍では広告を掲載しても、読者が購入しなければ見てもらえません。これは前にも書いた求人情報誌が商業雑誌として成り立たなくなった理由なのですが(前記事「商業誌版an全滅」参照)、同じことが風俗店にも言えるのです。特にタイの風俗店は日本の雑誌に広告を掲載しようとしても代理店レベルで受け付けてくれません。だからこそGダイの出る幕だったのが、Webで世界に発信できるようになれば、印刷媒体よりも安い費用で広く浸透していける。書き手の側にとっても、スペースに制限のないWebで大きな作品も披露できる。動画や音声と組み合わせてさらに理解やクリエイションを深められる。電子書籍でも動画の埋め込みなど紙にできない最先端の創造ができますが、Webサイトでの公開はアクセスしてきた全員に見てもらえるチャンスがあります。
西尾さんは
「無我夢中で雑誌を作り続けてきたがどこかで変わらなければならないと心の奥底ではずっと感じていた。でも私は紙媒体が好きで時代の流れに対して見て見ないふりをしていた。まだ(紙で)発刊し続けることはできるが近い将来変化を強いられるなら早いほうがいい。皆さんにはごめんなさいという気持ちで決めた。Webでの情報発信をやれるところまでやってみようと思う」
と書き、HPは存続すると発表。電子書籍での不定期配信にも含みを持たせています。
今月で創刊17周年の節目だったのですが、通巻204号で紙の雑誌としては終焉を迎えます。今後の新たな展開に期待と注目が集まります。