デルタ航空(DL=DAL アメリカ・アトランタ、NYSE上場)は、旧ノースウエスト航空(NW=NWA)以来30年近い長きにわたって運航してきた成田~バンコク(スワンナプーム)線をこの夏スケジュール限りで終了すると発表しました。羽田空港へのアメリカ系航空会社による国際線乗り入れ枠が確定したことを受けた見直しによるもので、同時に、スカイチームメンバーズによる日本とタイを結ぶ直行便が消滅することも意味します。
《成田発10月29日、スワンナプーム発10月30日のフライトをもって取りやめ》
DL283 NRT1630~BKK2115 DAILY
DL284 BKK0555~NRT1435 DAILY
(機材はB763 デルタワン=ビジネスクラス36席、コンフォートプラス=プレミアムエコノミー32席、メインキャビン=エコノミークラス143席)
しかし、ノースウエストが同じスカイチームのデルタ航空と合併した2008年頃から風向きが変わりだします。2010年には羽田空港の再国際化があったものの、米系キャリアは深夜早朝枠の限られた便数だけとなりこの時は大きな影響はありませんでした。2014年の国際線発着枠増加の時は、デルタ航空の抵抗もあってアメリカ路線の追加は認められず、ユナイテッド航空が撤退した後も成田~バンコク線は継続されました(前記事「ユナイテッド航空バンコク線28年の歴史に幕」参照)。
一方で、ノースウエスト航空時代にはマイレージプログラム『ワールドパークス』の特典航空券がわずか20,000マイルで取得できる点がマイレージマニアの間で大きな魅力となっていましたが、これも合併でデルタの『スカイマイル』に一本化された後、必要マイル数が45,000マイルと2倍以上に引き上げられ、完全に魅力を失いました。
さらに、2014年からはスカイマイルのマイル加算がデルタ航空便については区間マイルではなく購入した航空券の金額によって決まる、事実上のポイントプログラムに生まれ変わったことで、それまで格安航空券で頻繁に搭乗していたスカイマイル会員は1往復あたりの獲得マイル数が3分の1以下となってしまう計算で、常連客のデルタ離れが一気に進みました。
この結果、成田~バンコク線は採算が悪化。懸案だった羽田空港への米系キャリアの乗り入れ枠問題が決着し、デルタでは北米と日本以外の東アジア諸都市を直行で結ぶ便に力を入れるため、ユナイテッドに遅れること2年半でのバンコク線廃止を決めたと説明しています。
ちなみに、ソウルで発行されている『中央日報』(日本語電子版)は
「デルタは成田空港を離れる代わりに成田とバンコクを結ぶ路線を仁川空港にシフトした」
と伝えていますがこれは誤りです。大韓航空(KE=KAL)の仁川~バンコク線にデルタがコードシェアするだけで、仁川~バンコク間をデルタが自社運航するのではなく、またデルタが成田~仁川~バンコク間のPEXないし格安航空券を新たに販売開始する訳でもありません。日本を貶めるための意図的なデマに基づく「飛ばし」記事で、到底見過ごす訳にはいきません。
スカイマイルをはじめとするスカイチーム系のマイレージプログラムで、11月以降のDLバンコク線を予約している方は、大韓航空、中国東方航空(MU=CES)、中国南方航空(CZ=CSA)、チャイナエアライン(CI=CAL)など他のスカイチームメンバーズの便へ振り替えられますが、すべて経由便となってしまいます。