2016年3月11日金曜日

震災5周年…常磐線全通にメド、気仙沼線は鉄路断念へ

JR東日本(東京都渋谷区、東証1部上場)は、東日本大震災・東北地方太平洋沖地震から5周年となる11日までに、津波被災で壊滅的被害を受けた東北地方の路線について、最終的な処遇をまとめました。

《常磐線は2020年に完全再開》
福島第一原発事故後の放射能漏れにより、原子力規制庁が『帰還困難区域』に指定しているエリアを含む常磐線の富岡駅(福島県富岡町)と浪江駅(福島県浪江町)の間については、ようやく本格的な除染作業を始められるメドが立ったとして、4年後の2020年3月の全国ダイヤ改正を目標に復旧へ着手することになりました。

これは福島市で発行されている『福島民報』が2月に報じましたが、正式には内閣総理大臣・安倍晋三(自民党、衆院山口4区)が5日に楢葉町を訪れた際、国土交通大臣・石井啓一(公明党、衆院比例北関東ブロック)に電話で指示したもの。沿線を所管する水戸支社(茨城県水戸市)は石井大臣の厳命を冨田哲郎社長経由で受け、今月18日の着工を決めました。完成すれば、東京・品川駅直通の特急『ひたち』『ときわ』が原ノ町駅(福島県南相馬市)まで運転できるようになり、同時に「北の大動脈」東北本線を補完する東京~北海道間の貨物ルートが完全復活します。

その前段階として、浜吉田(宮城県山元町)~小高(福島県南相馬市)間が年内に開通すると、工事を受注した鹿島(東京都港区、東証1部上場)のHPで発表されました。暫定復旧している原ノ町~相馬と合わせ、仙台~原ノ町間の直通列車が約6年ぶりに再開されることになります。

《大船渡線末端部は鉄路断念へ》
盛岡支社(岩手県盛岡市)では、13年5月に基幹バスBRTで仮復旧した大船渡線の気仙沼(宮城県気仙沼市)と盛(岩手県大船渡市)の間について、

「鉄道での完全復旧は無理。BRTを継続し本復旧としたい」

と沿線の3自治体に通告しました。これに対し、陸前高田市は「受け入れざるを得ない」、大船渡市も「鉄道復活しても本数が少なければ意味ない。市民の利便を向上させられるなら」と表明し、この区間のJRバス転換が正式に決まりました。

BRT転換により、仙台と八戸(青森県八戸市)を三陸沿岸経由で結んでいた季節列車『リアスシーライナー』は震災前の形での続行が不可能に。今後は、盛駅から三陸鉄道線・八戸線経由での再開を目指します。

なお、BRTはJR東日本が管理しドライバーのみ地元バス会社に委託する形のため、他の本格在来線と同等の扱いであり青春18きっぷ・北海道&東日本パス・ジャパンレールパスなどは今後も使用できます。Suicaなど交通系ICカードの利用対象区間にもなっています。

《三陸鉄道中リアス線、再来年開通》
盛岡支社ではもう1つ、山田線の宮古駅(岩手県宮古市)と釜石駅(岩手県釜石市)の間が壊滅したままになっています。この区間は、先に復旧した三陸鉄道北リアス線・南リアス線につなぎ、一本化したいわば「中リアス線」として復活する方針を既に決めており、工事が始まっています。

工事は盛岡支社の責任で行い、完成後に三陸鉄道(岩手県宮古市)へ引き渡して営業させることになっています。

《気仙沼線も鉄路断念の方向》
仙台支社(仙台市青葉区)は、宮城県沿岸北部と県都仙台を結ぶ交通路だった気仙沼線についても、潰滅した区間の鉄路復活を断念して基幹バスBRTで継続する方針を固めています。

気仙沼と本吉(宮城県気仙沼市=旧本吉町)の間は日中30分間隔、柳津駅(宮城県登米市=旧津山町)まで行くバスも日中60分間隔に増え、さらに前谷地駅(宮城県石巻市=旧河南町)でJR石巻線に接続する便もできました。鉄道時代と比べれば圧倒的な利便の改善を実現しています。鉄道時代にも仙台直通快速『南三陸号』がありましたが、今後は石巻駅(宮城県石巻市)まで延長して仙石東北ラインへの接続ができれば、文句はなくなることでしょう。