2015年9月6日日曜日

ISO400のリバーサルフィルム、消滅へ

富士フイルム(東京都港区)は、フィルムカメラ用ポジ(リバーサル)フィルム『PROVIA(プロビア)400X』を年内出荷分限りで廃番にすると発表しました。ISO400のリバーサルフィルムはコダック(アメリカ・ニューヨーク州ロチェスター市)が2012年に製造を終了しており、富士フイルムの製造終了で市場から完全に消滅します。

PROVIA400シリーズは、1980年(昭和55年)、『フジクローム400プロフェッショナルD』の商品名で市場に投入され、ポジフィルムの主力商品としてプロカメラマンや書籍関係者、一眼レフカメラ愛好家などに支持されました。1994年(平成6年)からはブランドを一新して『PROVIA400』となり、2006年(平成18年)、現行のPROVIA400Xへリニューアルしました。

しかし、デジタルカメラやDTPの普及で銀塩写真の需要は確実に減りました。富士フイルムでは2012年、映画用フィルム事業の大幅縮小を発表したプレスリリースで

「写真フィルムにつきましては今後も生産・販売を継続してまいります」

と述べたものの、それについても「選択と集中」を厳しく行っていくとしており、今回のPROVIA400X終了もそれに沿った選択ではないかとみられています。

PROVIA400Xが担ってきた高感度分野は、デジタル一眼レフカメラでは設定の変更だけで簡単に出すことができるようになり、一般消費者向けポジフィルムとして史上最高感度のISO1600を達成していた『PROVIA1600』は2000年のマイナーチェンジで姿を消しました。普及向けラインとして並行販売されていた『Sensia(センシア)』の高感度品も日本では早々と販売されなくなり、発色を重視した低感度ライン『Velvia(ベルビア)』がフジクローム全体の主力へと転換していきました。

雑誌の投稿写真では、2000年代初頭頃まではポジでの参加を推奨としているところがありました。しかし、それらもデジタルへと移行していき、比較的遅くまでポジにこだわった版元ですら対応せざるを得ない状況に。月刊『鉄道ファン』で知られる交友社(東京都文京区)は、CD-Rの郵送や一部のコーナーに限ってオンライン投稿を受け付けるようになりました。

それに加えて、9.11テロ以後国際線発着空港に配備された強力なX線検査機によって、フィルムは受難の時代を迎えます。例えば日本の量販店で大量購入したポジフィルムを海外に持って行こうとして預け手荷物に入れると、X線によるカブリを受けて使い物にならなくなるケースが続出。富士フイルムでは、写真用フィルムを飛行機で持ち運ぶ場合は必ず機内持ち込みにすることと指示していますが、デジタルカメラではそういうことも起こりません。

そして、フィルム一眼レフカメラ自体新製品がほとんど出なくなって10年。ニコン(東京都港区、東証1部上場)、キヤノン(東京都大田区、東証1部上場)はまだフィルム一眼を作っていますが、需要は本当の意味で写真にこだわっているプロや愛好家、写真を専攻する大学生といったごく一部に限られています。

PROVIA400Xが出荷終了となる16年以降は、同じ富士フイルムで継続されるPROVIA100FやVelvia100を使い、高感度が必要になる環境ではフラッシュやフィルターといった周辺パーツにこだわる必要があります。フイルムの有効期限を考えると、あと2年分くらいの需要は見込まれるはず。今のうちに、買えるだけ買い溜めてください。