2013年8月21日水曜日

エアアジア・ジャパン改め「バニラエア」12月就航

エアアジア・ジャパン(JW=WAJ、千葉県成田市)の石井知祥社長は20日、東京・汐留のANA(NH)本社で記者会見し、11月1日付で社名を「バニラ・エア」に変更すると発表しました。既に周知の通り、AirAsiaグループブランドでの運航は10月26日限りで終了となり、11月中は運休して、12月に新たな路線で再スタートを切る予定です。

新生バニラエアは、「シンプル」「エクセレント」「ニューベーシック」をテーマに、既存の格安航空会社(LCC)とはまったく違う価値観を打ち出すことを狙っています。Peach(MM=APJ、大阪府泉佐野市)が関西国際空港と那覇空港をハブにアジアを攻めつつ、国内線もバランスよく運営するというポリシーなのに対し、ジェットスター・ジャパン(GK=JJP、千葉県成田市)は親会社のジェットスターエアウェイズ(JQ、オーストラリア国籍)がそうしたように最初は国内線を固める方針を採っています。ただし、ジェットスターがそういう施策を採れるのは、国際線部分をジェットスターアジアエアウェイズ(3K=JSA、シンガポール)にある程度任せられるという事情があります。

バニラエアは両社と全く異なり、成田空港をハブにしてリゾートやレジャー需要の強い国際線を攻めるとしています。これは、ジンエアー(LJ=JNA、韓国・ソウル)の経営手法とよく似ています(前記事「エアアジア・ジャパン合弁解消」参照)。一方で、このキーワードを打ち出した背景には、ANA側の望む意図も見え隠れしています。

ジンエアーの場合、 韓国人に人気のあるリゾート地へ向けて、親会社の大韓航空(KE=KAL)便を補完しながら飛んでおり、新千歳、那覇、バンコク、マカオ、クラークアンヘレス、セブ、グアムといった路線を取り揃えています。一方で、大韓航空自社ではこれまで就航できなかったり、就航しても採算性に問題があるなどした国際線の収支改善という、エアプサン(BX=
ABL)が採って成功した手法も導入しており、長崎とビエンチャン線がその最たる例です。

エアアジア・ジャパンの親会社、ANAホールディングス(東京都港区、東証1部上場)は、エアアジア・ジャパンにANAが運航している近距離国際線の収支改善を期待したために、合弁相手のAirAsia(AK=AXM)との路線対立が鮮明化したと言われています。実際、エアアジア・ジャパンが運航する成田と中部セントレアからの仁川線では、それまで就航していたANA便が廃止されています。逆に、成田~台北桃園線ではエアアジア・ジャパンの就航後もANA自社便が存続しているケースもあります。バニラエアの目指すリゾート路線というのが、どこまで鮮明に出るかによっては、会社としてのカラーの確立に時間がかかる可能性もあり、注目すべきところです。

路線決定は9月の連休明け。当初はエアバス320が2機しかなく、まとまった数の機材が入ってくるのは2014年になってからのため、本格的に路線が増えるのは来年以降となります。