2012年10月19日金曜日

KLMマニラ線経由便化で中東系に商機が

エミレーツ航空(EK=UAE、アラブ首長国連邦・ドバイ)は、来年1月からマニラ発着便を毎日3便に増強すると発表、航空券の予約を開始しました。全便にB773ERを投入して1日あたり約1,300席供給できる体制が完成。欧州圏への乗り継ぎが圧倒的に改善し、他の欧州キャリアを大きく引き離します。

《ドバイ発2013年1月1日、マニラ発1月2日から有効》
EK335 MNL0020~DXB0525 DAILY
EK337 MNL0845~DXB1350 DAILY
EK333 MNL1735~DXB2240 DAILY

EK332 DXB0400~MNL1600 DAILY
EK334 DXB1030~MNL2230 DAILY
EK336 DXB1830~MNL0630+1 DAILY

(機材はいずれもB773ER ビジネスクラス42席、エコノミークラス386席)

エミレーツのマニラ線の主な利用客は、中東方面へ出稼ぎに向かうフィリピン人といわれています。しかし最近、フィリピンから欧州方面へ、あるいは逆に欧州からフィリピンへ乗り継ぎする乗客も増えており、エミレーツをはじめとする中東系航空会社各社は供給増加に追われるようになりました。その原因となっているのは、フィリピン政府が航空会社に課している特別税だといわれます。

2010年、フィリピン航空(PR=PAL)は欧州連合(EU)が作成した欧州域内乗り入れ禁止のブラックリストに登載されてしまいます。アロヨ前大統領時代のフィリピン政府はこれに対抗、航空会社が政府に納める運航税を引き上げました。

フィリピン国籍の会社は1便ごとに全運賃収入の3%を納めますが、外国キャリアは特別税が上乗せされて5.5%を納める必要があります。この特別税がバカにならないとして、欧州キャリアはマニラへの直行便から相次いで撤退。最後に残ったKLMオランダ航空(KL)も今年3月の夏スケジュールから直行便を取りやめ、台北経由としました。これによってフィリピンと欧州圏の間を直行する航空便はなくなってしまいました。

フィリピンから欧州主要都市へ向かうには、中東諸都市やバンコク、シンガポール、香港、それに成田など東アジアのハブ都市で乗り継ぎをしなければならなくなっています。そこで他の中東系キャリアもマニラ線の運航の拡大に努め、エティハドエアウェイズ(EY=ETD)がアブダビから毎日2便、カタール航空(QR=QTR)とガルフエア(GF=GFA、バーレーン・マナマ)は週10便以上を運航。クウェート航空(KU=KAC)とサウディア(SV=SVA)も週4ないし6便を持っています。

しかし、本拠地ドバイからほとんどの欧州主要都市やアフリカ、アラブ諸都市へ毎日複数便のフライトを持っている世界最大の長距離国際線キャリア、エミレーツはエアバス380やB773ERなどの大型機で圧倒的な輸送力を確立しています。ASEAN域内ではバンコクやクアラルンプール、シンガポールに就航済みのエアバス380を投入とはいかないものの、それでも1日あたり片道1,300席の供給能力は中東系最大。他社を引き離すには十分すぎるアドバンテージといえます。