2012年10月24日水曜日

シンガポール航空のエアバス345、退役へ

シンガポール航空(SQ=SIA)は、アメリカ直行便に使用してきたエアバス345型機5機を来年第4四半期にも退役させ、売却することでメーカーのエアバスと合意、発表しました。これにより、2004年から運航されてきたチャンギ~ロサンゼルス、ニューアークの直行路線はA345の退役と同時に廃止されることが確定しました。

SIAでは2004年に、エアバス343(社内呼称「セレスター」)の延長線上で4発エンジンながらも地球半周クラスの超長距離フライトを直行運航できるエアバス345型機を導入、「リーダーシップ」の愛称で親しまれました。その性能を最大限に生かすべく、シンガポールから北米大陸への直行路線を開発。5機の納機を受けたA345が専用で運用されてきました。

しかし、A345は競合メーカーのボーイングが出している同じクラスの飛行機、B773ERやB772LRと比べて非力であることから、燃油価格高騰の流れの中でより多くの燃料を積まなければいけないという経済性の面で槍玉に挙げられてしまいます。

SIAに対抗してやはりA345で北米直行路線を作ったタイ国際航空(TG=THA)にも悪影響が及びます。TGのニューヨーク直行便は開設から3年弱で廃止となり(前記事「タイ国際航空NY直行便を廃止」参照)、ロサンゼルス便は関空経由を検討した後仁川経由に変更されました。
タイ国際航空はA345の売却先を探したものの見つからず、羽田線など本来の性能とはかけ離れた路線に投入せざるを得なくなるという悪循環に陥りました。

そこでSIAでは2009年に改修工事を行い、ビジネスクラスのみ100席というコンコルドも真っ青のコンフィギュレーションで何よりも収益を最優先にする政策を採りました。一方で、成田経由ロサンゼルス線にはエアバス380を投入してエコノミークラスのサービスを存続するとともに、スーパーファーストクラス「SIAスイート」も用意し多彩な需要に応えていました(前記事「成田経由LAXに転出するエアバス380」参照)

そして、初納機からまもなく10年を経ようとする今、SIA社内で比較的機齢の高い存在になってきたエアバス345は本格的な退役の時期を検討されることになりました。SIAでは今回の発表と同時にエアバスとの間でA3805機とA359XWB20機を追加発注する覚書を交わしました。その「下取り」としてA345はエアバスに引き取られることになり、SIAからの退役が決まったものです。後継機としてB772LRを導入する可能性も検討されたものの収益性の面から見送られ、シンガポールからのアメリカ大陸直行路線はA345と運命を共にすることが決まってしまいました。