2009年6月2日火曜日

浦上容疑者再逮捕!高飛びに失敗

 警視庁は2日、「棚橋事件」の主犯と目されている浦上剛志(うらがみつよし)容疑者(30歳、大阪府出身)を再逮捕しました。容疑は旅券法違反(旅券の不正取得)と入管難民法違反、偽造公文書行使、それに詐欺。浦上容疑者は今後、岐阜に移送されて棚橋事件の本格的な取調べに入ります。

 浦上容疑者は棚橋事件が起こった翌日にタイから帰国。その後、東京都内のネット屋を拠点にアンダーグラウンドビジネスを繰り広げてきました(前記事「浦上容疑者、逃走8ヶ月の末に」参照)。その過程で、岐阜県警察から指名手配されていることを知ります。


「指名手配されている以上、本人の身分が割れたら逮捕される。他人名義の口座がどうしても必要だった」

と思い立った浦上容疑者はある掲示板に「銀行口座を買い取ります」と書き込みます。これを警視庁ハイテク犯罪総合センターの捜査員が見つけ、東京からも指名手配をかけたところまでは前記事で既に明らかになっています。

 その後、金に困っていた1人のフリーアルバイターが浦上容疑者の書き込みに食いつきます。今回、浦上容疑者と一緒に逮捕された萩原利幸(はぎわらとしゆき)容疑者(38歳、群馬県出身)です。浦上容疑者は萩原容疑者から戸籍の一部記載事項証明書と健康保険証を渡され(この件について、産経新聞は「35,000円で買い取り」としたが、NHK首都圏放送センターは「借りた」と表現していました)、群馬県西毛パスポートセンター(群馬県高崎市)を訪れてパスポートの新規発給を申請します。当時まだ制度が残っていたハガキによる居住地の確認(前記事「パスポート申請時のハガキが不要に」参照)は萩原容疑者の自宅(群馬県安中市)に届けさせ、1週間後に再会。浦上容疑者の写真が転写されたにもかかわらず個人情報は萩原容疑者のものという、偽造パスポートが完成しました。
 浦上容疑者はこの旅券で、昨年12月以降、逮捕されるまでの4ヶ月間に6回、カナダ・韓国・香港などへ出国。棚橋事件で得た1,700万円の一部に加え、銀行口座の売買で得た約400万円の利益を現地の銀行口座に移してマネーロンダリングしたか、カジノにつぎ込んだとみられています。このため警視庁と岐阜県警察では、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益移転)の可能性もあるとして、慎重に捜査を進める模様です。

 一方で、棚橋事件で森宏年被告と浦上容疑者がタイに渡ったときの旅費も、詐欺で捻出された可能性が指摘されています。
 棚橋事件が起こる約2ヶ月前。ちょうど「外こもりのススメ」の編集が最終段階に差し掛かっていた頃、森被告は京都市内の旅行代理店を訪れ、「新幹線ビジネスきっぷ」3冊(1冊25枚綴り*3=75枚、794,400円)をクレジットカードで購入します。ところが翌日、使われたカードを紛失したと下京警察署(京都市)に届出がなされます。購入した切符は市内の金券屋で既に換金されており、紛失したことにして補償制度で穴埋め、支払いを免れようとした訳です。森被告はこの件でも容疑を認め、岐阜地方検察庁(岐阜市)に追送検されています。
 しかも浦上容疑者は、事件と前後して「人力検索はてな」に、事件と関連する質問を繰り返しています。このことからも浦上容疑者が主犯として棚橋さんを計画的に殺害し、資産を奪い取ろうとしたことは明らかです。事実、森被告は浦上容疑者から事件に誘われた理由を

「自分(浦上容疑者)と棚橋さんの間に金銭面のトラブルがある、というより自分がFX(外国為替証拠金取引)で負けたのは棚橋さんのせいだ。こらしめる」

と述べていたと供述しています。
 浦上容疑者は早ければ週末にも岐阜へ移送され、棚橋事件はいよいよ佳境を迎えます。