2009年2月8日日曜日

タクシンが日本出入国禁止を食らった理由

 アピシット・ウェチャチワ首相は5日、タクシン・チナワット元首相が日本から出入国禁止を食らったと明らかにしました。日本公式訪問に出発する直前、記者団の質問に対して述べたものです。

 在バンコク日本大使館査証部によりますと、日本はもちろん、日本が国家として承認しているいかなる外国においても法令に違反して逮捕・訴追され、1年以上の懲役または禁固刑を受けた外国人については入国を拒否、またその際、日本入国にビザが必要な国の国籍者についてはビザの発給も拒否できることになっています(出入国管理および難民認定法5条の4)。


 タクシン元首相は、2008年10月21日に憲法裁判所(バンコク首都圏プラナコン区)から汚職防止法違反(日本刑法の収賄・背任に相当)で禁固2年の実刑判決を受けており、「1年以上の懲役または禁固刑」という拒否要件を満たしてしまっています。
 もっとも、入管難民法5条の4には、「政治犯についてはこの限りにあらず」という一文もあり、タクシン元首相の場合、「判決自体が反対勢力の陰謀だ」として自らは政治犯と主張する可能性もあり得ますが、判決は首相在任中の背任行為に対して出されていることから明らかな経済犯で、政治犯には当てはまりません。

 日本外務省は昨年11月の時点で、既にタクシン元首相をブラックリストに入れていたといいますが、そうであれば当時現職だったソムチャイ・ウォンサワット前首相が日本に連絡を取り、当時与党だったタクシン派政党「パランプラチャチョン党」その後解党処分。前記事「PAD完勝!!首相失職でスワンナプーム再開」参照)関係者を通じて、タクシン元首相本人に通告が行っていなければおかしい。
 しかもタクシン元首相は、首相を退任しているにもかかわらず外交パスポートで世界中の多くの国へビザなしで行っていました。タイでは首相経験者は在任中に発給された外交パスポートを生涯持ち続けることができる規定になっていますが、これを逆手にとって日本にビザなしで頻繁に出入国する可能性もあった(タイから日本へは外交・公用パスポート所持の公務員に限り90日間のビザなし渡航が認められています)だけに、早急な外交パスポート取り消しにあたって、重要な判断材料にもなったはずです。明らかなソムチャイ前首相の怠慢です。それによって後任のアピシット首相は余計な仕事をしなければならなくなり、迷惑千万でしょう。

 これに対し、パランプラチャチョン党に在籍したこともあるプラチャ下院議員(プアタイ党)は、日本はおろか中国・香港も入国禁止にはしていないと反論しました。これは明らかな矛盾です。日本外務省は正式に発表して対抗すべき!!