11月30日、東京・後楽園ホールで行われた日本ボクシングコミッション(JBC)主催東部地区プロテスト。タイ国フライ級4位、「ハヤト・チューワッタナ」こと木村隼人選手(17歳、横浜・さくらジム所属)がなんと、B級直接受験では史上2人目の不合格となりました。 もっとも、「B級を直接受験して不合格になった者はC級(4回戦まで)合格とみなす」という救済制度があるらしく日本での選手活動はできるようですが。
とはいえ、彼は日本ボクシング界に新たな1ページを作る先駆者になりました。JBCプロテスト受験資格に満たない16歳以下の選手が海外で試合経験を積み、17歳の誕生日に実績を持って凱旋帰国、B級(6回戦まで)プロテストを受験するというのは、史上初の偉業。あまりの緊張で本来の力を出せずに不合格というのも、ある意味勲章じゃないですか。
隼人選手の父親、木村幸弘さんは80年代にプロボクサーとして国内通算8勝(5KO)5敗1分けと活躍しており、親子2代のボクサー。神奈川県川崎市の公立中学校を卒業後、一刻でも早くプロボクシングルールの試合をしたいという一心でバンコクを目指しました。タイのボクシングコミッションはプロテストを受験できる年齢を15歳以上と規定(日本は17歳~29歳)しており、隼人選手の要求に適う訳です。
この時、タイでジムに所属して長期間練習を積む、もしくは試合をするためのビザの問題が出てきます。在東京タイ大使館(日本)の説明によりますと、タイ国内でスポーツ選手として試合に出場する場合は、「トランジットS」というビザが必要だとあります。1回の在留許可日数は30日。取るには当然、試合日程の確定とプロモーターの受け入れ推薦状が必要です。
K-1で活躍している武蔵、魔裟斗両選手のように、練習の拠点がバンコクというだけで、タイ国内での試合出場がないのであれば、正規観光ビザやビザなしでももちろんOKです。
が、トランジットSビザの発給は国籍も居住地も第三国にあるアマチュアアスリートが来タイして競技を行うために短期滞在するという前提であり、隼人選手のように最初からプロになることを目的として来タイし、国内のジムに所属して長期在留、しかもタイ国内で試合に出場してファイトマネーを得るとなれば、当然このビザでは足りません。17歳の誕生日を迎えるまでの約1年3ヶ月を、どうやって解決したのでしょう。
普通の沈没在留者であれば毎月のビザクリアや正規ビザの組み合わせで一応は済んだはずです。しかしそれも今年の10月以降は厳しくなりました。では、今後隼人選手のような若者が試合の機会を求めてタイを目指すなら、どうすればよいのでしょうか。
1.中学校から卒業証明書を出してもらう
公立校であっても卒業証明書は出してもらえます。卒業した学校の先生に相談してください。到着後に、タイ語訳して在バンコク日本大使館で認証を受けます。
2.ビザなしでタイに入国する
30日の在留期間中に所属すべきジムを見つけます。見つけたら、改めて正規観光ビザを取りに行けばいいのです。
3.正規観光ビザを取りに行き、その在留期間(当初60日、延長30日)内にプロテスト受験の目処をつける
4.プロテストに合格する
5.正規観光ビザからノンイミグラントOビザに切り替えを申請する
移民庁に書類を提出するのですが、これはジムがやってくれます。あえて必要書類を書くなら以下が最低水準になると思います。
・正規観光ビザで入国済みのパスポート原本
・ボクサーライセンス原本とコピー
・所属ジム会長の推薦状
・会長の国民IDカード両面のコピー
・中学校卒業証明書の原本とタイ語訳本(日本大使館認証済みのもの)
・写真2枚
・申請料2,000Bt.(会長が出してくれるでしょう)
ビザの話はともかくとして、これまでなら中学卒業者は高校や社会人である程度のアマチュア経験を積むしかなかった(亀田兄弟もそうでした)日本でのプロボクサーへの道に、新たな選択肢が広がりました。隼人選手が拓いた道は、きっと大きな流れになることでしょう。Traveler's Supportasiaは、フロンティア精神旺盛な木村隼人選手を応援します。