2018年8月12日日曜日

世界初!大韓航空がハンドキャリアを完全追放へ

大韓航空(KE=KAL ソウル特別市江西区、韓国証取上場)は、世界の民間航空会社として初めて、ハンドキャリー(旅客の預け手荷物枠を利用した商業貨物の緊急輸送)を全面禁止する政策を発表しました。日本のお盆とその後に控えるチュソク(秋夕:韓国のお盆)を前に、まず本拠地・仁川空港発の全便で実施し、好評なら仁川着や釜山・金海空港発着便でも実施する構えです。

日本地区本部(韓進インターナショナルジャパン:東京都港区)のHPが8月10日に更新され

「航空機の定時運航と円滑なお客様サービスをご提供するためすべての商業用物品の受託手荷物としてのお預かりは致しかねます」

と記載されました。

ここでいう商業用物品は、ハンドキャリー業者が引き受けた貨物のことを指します。ハンドキャリーは、郵便局のEMS(国際スピード郵便)や通常の航空貨物輸送でも間に合わないような超緊急の物品や書類を、個人旅客の預け手荷物枠を利用して運ぶサービスで、日本では1990年代のバックパッカーブームとともに注目され、マイレージマニアがJALグローバルクラブ(JGC)やANAカードスーパーフライヤーズクラブ(SFC)など、上級会員資格の修行を兼ねて運び手に志願する例があった他、季節労働者の副業としても重宝されてきました。

JGCやSFC、KALならモーニングカーム以上になれば、エコノミークラスでも預け手荷物枠を増やすことができ、その分、ハンドキャリー業者にとっては一人の運び手に依頼できる荷物の量が増えることになります。そのため、ハンドキャリー業者から依頼を受けて搭乗する運び手がチェックインカウンターに持ち込んだ荷物の処理に時間を要し、他の荷物の少ない乗客にまで迷惑がかかり最悪、定時(時刻表に記載の時間から15分以内)出発ができなくなる恐れがあるというのが、今回、会社側が出してきた建前です。

しかし実際は、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に向けた国連経済制裁逃れの闇貿易を封じるため、あるいはそれに乗じて、日本の暴力団が絡んだ密輸ルートの根絶を狙った可能性があるのではないかと、Traveler's Supportasiaでは分析します。

大韓航空は、高麗航空(JS=KOR、北朝鮮・平壌市中区)が国際線を就航させている北京首都空港、瀋陽(中国遼寧省)、ウラジオストック(ロシア・極東沿海地方)のすべてに定期便を飛ばしているので、これらの都市で運び手が高麗航空へ乗り継ぎをすれば、運び手が持ち込んだ荷物は北朝鮮国内に入ってしまいます。

また、ハンドキャリーで運ばれる物品は航空貨物としての通関を経ないため、何も知らずに引き受けた運び手が実は麻薬類や銃火器の部品を運んでいて、経由地で見つかって厳罰になるという事例も後を絶ちません。仁川空港経由日本へのルートは、アシアナ航空(OZ=AAR)利用も含め以前から裏社会では知られていて、今回、韓国税関とKALが組んでその根絶を狙ったのではないかとも考えられます。

当面は、仁川空港のチェックインカウンターと搭乗口でのみ適用するとしていますが、例えば日本発のKAL便利用で仁川から先もスルーチェックインされるケースにおいて、今回の規制が適用されるかどうかは現時点では不明です。日本からチェジュ航空(7C=JJA)やイースター航空(ZE=ESR)など他社便で仁川に入って、KAL便に乗り継ぐのであれば、当然規制対象となります。そして、商業用物品とみなされた品物はどんなものであっても航空貨物扱いとして、郵便事業者またはフォワーダー(航空混載貨物事業者)を通さなければならないという解釈がなされます。