富士山静岡空港(静岡県島田市)の民間移譲を目指している静岡県空港振興局空港政策課は20日、優先交渉権を獲得していた東京急行電鉄(東京都渋谷区、東証1部上場)と三菱地所(東京都千代田区、東証1部上場)のコンソーシアムと基本協定を結んだと発表しました。東急グループが空港運営権を獲得するのは、仙台空港(宮城県名取市)に続いて2ヶ所目。三菱地所は、高松空港(香川県高松市)と下地島空港(沖縄県宮古島市)に続いて国内3ヶ所目の空港運営参画で、来年4月から両社による運営がスタートする予定です。
県庁からは同時に、東急・三菱地所グループが行った提案の概要とそれに対する審査講評書が公開されました。この中で、将来的に静岡空港と東南アジアの都市を結ぶ直行便の開設を目指す、その就航先候補としてバンコク(スワンナプームまたはドンムアン)が挙げられていると、地元紙の静岡新聞が報じました。
提案概要書によると、20年先の2038年までに就航路線を現在比6路線増の17路線以上にし、新規に就航を目指す地点として仙台・高松に加えて成田(千葉県成田市)、バンコク(スワンナプームまたはドンムアン)、香港、グアムを例示しました。
一方海外は、格安航空会社(LCC)の積極的な導入を進めると謳われています。香港やグアム線であれば、香港エクスプレス(UO=HKE)は元より国内LCC各社にも導入されているエアバス320クラスでも十分運航が可能ですが、東南アジア直行となると、世界遺産富士山を持つ観光地の地元とはいえ大型機で運航するのはまだまだチャレンジングな面があり、小型機材の性能向上がカギを握ってきます。
例えばシンガポールの場合、シルクエアー(MI=SLK)が日本線に投入しているB738や、ジェットスターアジア(3K=JSA)のエアバス320ceoでは、沖縄へは直行できるものの日本本土は西日本がギリギリ程度の航続距離しかなく、小型機で東日本へとなると、後継型でエンジン性能が向上したB738MAXやエアバス321neoの納入を待つことになります。Scoot(TR=TGW)のB787ファミリーでは直行が可能ですが小型機と比べて100席以上も座席数が多く、日本とシンガポールの間に経由地1ヶ所を入れて、採算を確保している状況。この手法を静岡線でも取れるなら、つまり台北やドンムアン経由の富士山静岡というのであれば、可能性は十分あり得ます。
バンコク線では、現状はチャイナエアライン(CI=CAL)で台北桃園乗り継ぎがあるものの広く普及しているとは言えません。直行便乗り入れによって、成田空港や関西空港と組み合わせた訪日外国人観光客向けの周遊ルートを構築してもらおうという期待をかけていると分析できます。
とはいえ、タイ側のLCCとして日本に乗り入れているタイエアアジアX(XJ=TAX)とNokscoot(XW=NCT、ドンムアン区)は共に大型機を使用しているため、富士山静岡空港クラスの地方空港では一度に400人近く乗れる大型機で採算が合うかというと厳しいのも現実です。タイライオンエア(SL=TLM、ドンムアン区)が持っているB739なら、LCC運航に必須の高い搭乗率を維持できる可能性はあります。
ベトナムの場合は、ハノイとホーチミンシティのどちらに就航するかで対応が変わってきます。ハノイであれば日本からの距離が比較的近く、ジェットスターパシフィック(BL=PIC、ホーチミンシティ)とベトジェットエア(VJ=VJC、ハノイ)が持っているエアバス320ceoでも直行可能。しかし、ホーチミンシティではエアバス321クラスが必須となり、A321を持っていないジェットスターパシフィックは直行便を運航できないことになります。
台北桃園線も、チャイナエアラインの完全子会社になったタイガーエア台湾(IT=TTW)をどのタイミングで就航させるかが課題になってきます。韓国線では、エアソウル(RS=ASV)に続いてグアムやサイパンなどへの以遠権行使も視野に入れているチェジュ航空(7C=JJA)の新規就航を実現できるか注目されます。