マレーシア外務省(プトラジャヤ市)は3日、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の一般旅券所持者に認めていた30日間のビザなし入国を今日3月5日(日)限りで終了すると発表しました。明日6日からは、事前のビザ取得が義務付けられます。なお今回の措置で、北朝鮮公民はASEAN加盟国を含む、全世界すべての国への渡航に原則ビザが必要となります。
また、4日には駐クアラルンプール北朝鮮特命全権大使・姜哲(カンチョル)氏をペルソナノングラータ(外交官受け入れ不適格)とし、在留許可を取り消して48時間以内に帰国するよう命じる(日本の退去強制に相当)とも発表しました。既に在平壌マレーシア大使館のモハマド・ニザム特命全権大使は本国に戻っており、両国間の外交関係は事実上断絶することを意味します。
対象には、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯、東京都千代田区)からパスポートの発給を受けた在日朝鮮人も含まれます。
姜大使は、2月13日(月)にKLIA空港第2ターミナル(KLIA2)で起こった金正男(キムジョンナム)氏暗殺事件(前記事「白昼堂々KLIA2で金正男氏暗殺」参照)について、事件発生当初から北朝鮮政府や朝鮮労働党中央委員会、朝鮮人民軍(国軍)などの関与を全面否定していました。その後、KLIA2構内の防犯カメラの映像を解析した結果や、現地での検死で遺体からVXガスの成分が検出されていたなどの新たな事実が発覚しても
「死因は急性心不全。毒殺との検視結果は当たらない」
「正男さんの遺体を火葬せず無条件で直ちに北朝鮮本国へ送れ」
「尊厳ある朝鮮公民の命を失わせた結果責任はマレーシアが負え」
などと繰り返し騒ぎ立て、マレーシア政府の怒りを買っていました。
東京で発行されている『朝鮮新報』は国営朝鮮中央通信の配信を引用して
「我が方を貶めるため、南朝鮮(韓国)とアメリカが作った筋書きに沿ってマレーシアが動いた。容疑者は以前に南への入国実績があり、もしVXガスが使われたとしても南側(韓国統一部)の工作員が持たせたのではないか。南朝鮮逆賊一味こそ国際社会の強い非難を受けるべきだ」
などと伝え、姜大使の発言を裏打ちしていました。
(3月7日追加)
姜大使は6日のマレーシア航空360便北京行きに搭乗してマレーシアを後にしました。その際も
「特命全権大使として我々の正当な立場を主張しただけなのに極端な態度を取られたのは極めて遺憾だ」
と記者団に言い残しました。また、北朝鮮政府外交部も報復として、ニザム大使をペルソナノングラータに指定し再入国を禁じると発表しました。