2017年2月9日木曜日

基幹バスBRT廃止へ、4月30日限り

首都圏政庁とBTSグループホールディングス(チャトチャック区、SET上場)は、バンコク首都圏唯一のバス高速輸送システムである基幹バスBRTサトーン~ラチャプルック線の営業を4月30日(日)限りで終了すると発表しました。ヤンナワ・バンコーレム両区の市民の足として利用されてきましたが、開業からわずか7年で廃止されることになります。


BRTは、アピラック・コサヨーティンBMA長官(日本の知事に相当)時代の2004年頃に企画され、UDD軍の戦乱が終わった2010年5月29日に営業を開始しました。首都圏政庁と外郭団体のクルンテープタナコム(プラナコン区)が、BTSグループに運営を委託。さらに実際のバスの運行は、民間委託バス大手のプレミアグループ(プラウェート区)に下請けさせるという複雑な権利関係になっていました。

当初は一律10Bt.均一の運賃でしたが、2013年5月から半額の5Bt.均一に値下げして集客を図りました。しかし、このキャンペーンでも思ったように乗客数が伸びず、逆に赤字を増大させてしまいます。

キャンペーンでは沿線の商業施設への誘客が期待されましたが、アクセスが不十分。同時に1,000人を収容できるバンコク有数の大規模ビアホール『タワンデーン』はBRTナララム3駅の目の前にあり便利ですが、地区最大のSC『セントラルプラザラマ3』(ヤンナワ区)へはタノンチャン、ナララム3の両駅からかなり距離があり、歩いて行けません。ワットダン駅に近い『Int Intersect』(ヤンナワ区)は撤退するテナントが相次ぎ、屋上1フロアが丸々空いてしまいました。BTS沿線のスクンビット22から移転した『マンボキャバレー』(ヤンナワ区)は、外国人団体客が貸切バスで乗り付けるのが主流で来場手段にBRTを使う観客はほとんどいませんでした。

キャンペーンは2016年1月31日で終了し、首都圏バス公団(BMTA)系の民間委託エアコンバスと同じ本運賃に移行しましたが、キャンペーンがただでさえ一律5Bt.だったと安すぎたため区間によっては最大で4倍もの大幅な値上げとなり、ますます利用客離れを招く結果になりました。クルンテープタナコムは2016年3月の時点で廃止を検討し始め、現在構想段階にあるMRTグレーラインのオープンと引き換えに廃止という提案をします。

そこまでの策として、昨年10月からプロモーションを再開。大人は5Bt.と10Bt.の2段階の運賃としました。ところがこれも首都圏政庁の財政悪化で持ちこたえられなくなり、グレーラインの建設が始まる前に最終決断をしなければならないところまで追い込まれました。

折しも、ラマ9世橋駅近くの『カナパヤリバーフロント』(バンコーレム区)に期間限定でオープンした『しゃかりき432"@Canapaya Riverfront』が好評を得て5月以降、Int Intersectに移転し常設化を決めたという明るいニュースがあったものの、新店オープンの直前で頼みの公共交通機関が廃止というとんでもない状況に。しゃかりきIntの開店後は、MRTブルーラインクイーンシリキットセンター駅から[205]を使わなければならなくなります。

(4月1日追加)
運輸省の指示により、廃止は撤回されました。BRTは5月1日以降も運航が行われます。ただし全線15Bt.均一に値上げが行われます。