2017年2月16日木曜日

キョーハンブックス自己破産!親会社・地図共販の破産に連鎖

出版取次中堅で地図、旅行書を専門に卸していた日本地図共販(東京都千代田区)が10日、東京地方裁判所民事部に自己破産を申し立てて完全倒産しました。この際、地図共販の子会社で旅行書などの出版を手掛けていたキョーハンブックス(東京都千代田区)も連鎖して自己破産を申し立てていたことがわかりました。設立40周年の節目だったにもかかわらずの倒産で、関係者は対応に追われています。

日本地図共販は、終戦直後の1946年(昭和21年)に設立された伝統ある地図の卸問屋でした。同業大手の武揚堂(東京都中央区)、内外地図(東京都千代田区)と共に国土地理院(茨城県つくば市)から「元売捌」と呼ばれる地形図などの卸売業者に指定され、全国の地形図取扱い書店へ卸すとともに、東京・神田神保町の本店では全国すべての地形図を取り揃えて店売りも行っていました。

一方、地図共販は中小零細の出版社や編集プロダクション(編プロ)が作った旅行ガイド本などの販売元になる機会も多く、自社で地図や旅行関連書などの版元活動を行うため、1977年(昭和52年)にキョーハンブックスを設立しました。最盛期の1990年代後半には両社合わせて100億円を超える売り上げを挙げていました。2000年代以降は、弊誌永遠名誉董事長・下川裕治が単行本や『歩くガイドシリーズ』などの版元として仕事をする機会が増え、蔵前仁一さん主宰の『旅行人』やバンコク編集で鳴らした『Gダイアリー』などから出た単行本もキョーハンブックスを版元に数多く出されました。

しかし、2006年に『ユニオンマップ』のブランドを持つ道路地図の版元、国際地学協会(東京都新宿区)が民事再生手続きをしたあたりから風向きが変わりだします。Google MapやMapionなど民間の地図サイトが充実したのに加え、国土地理院も電子国土Webを無料で公開するなど紙の地図の需要は激減。地図共販と取引をしていたのを他の会社へ乗り換える「帳合変更」をする書店も続出し、加えてキョーハンブックスでは新刊点数と販売部数の落ち込みが止まらず業績が悪化していました。

信用情報大手の東京商工リサーチ(東京都千代田区)は、地図共販が昨年9月の決算期まで6期連続赤字決算を記録していたところへ、今年に入って複数の出版社が取引を打ち切ってきたのが致命的となって事業継続困難に陥り、キョーハンブックスも地図共販の事業停止で連鎖的に事業継続ができなくなったと伝えました。さらに、東京で発行されている業界専門紙『文化通信』は、地図共販からそれら版元に対する支払いが滞るなど資金繰りが極度に悪化したのが原因と報じています。

『歩くガイドシリーズ』のうち、バンコク編は例年7月に最新版がキョーハンブックスを版元として発売されていましたが、今年はこの事態でどうなるか微妙。下川はキョーハンブックスに代わる版元を一日でも早く見つけるべく、奔走しています。