外務省領事局(ラクシー区)は、タイを訪れる外国人に発給している正規観光ビザ(TR)の制度を見直し、新たにマルチプルエントリービザの発給を行うと発表しました。11月13日(金)申請分から受付を開始します。
従来は、3ヶ月ないしは6ヶ月の有効期間中に30日(主に途上国)または60日(西側先進国)の在留許可を1回得られる「シングルビザ」、2回得られる「ダブル」、3回分まとめて発行する「トリプル」の3種類があり、シングルはすべての在外タイ公館で、ダブル・トリプルは一部の大使館・総領事部で発行されていました。今回は、ダブル・トリプルを廃止し、それに代えて発行日から6ヶ月以内であれば何度でも入国できる「マルチプルエントリー」を設定します。
観光ビザのマルチプルエントリーは、ASEAN域内ではベトナムで既に発行されており、カンボジアも日本人であれば厳密な意味の観光ビザではないものの、マルチプルエントリーの長期ビザが簡単に取得できます
(前記事「カンボジア1年マルチビザが身近になった」参照)。外務省は、これら他国の制度を研究した上で導入を決めました。しかし、裏には出入国業務を統括する国家警察への贈収賄の芽を摘むという、プラユット・チャンオチャ首相の意向が見え隠れしていると、関係者は分析しているようです。8月17日に起こったラチャプラソン交差点(パトゥムワン区)での爆弾テロ事件から1ヶ月も経たずに今回の決定が発表されたのも、犯人グループが陸路国境検問所で賄賂を払ってビザなし入国したと伝えられたことに対する緊急の策ではないかとの見方すらなされています。
外務省が王室官報(日本の官報に相当)に掲載した告知では、申請費用は5,000Bt.ないしは各領事館の定めるレートで換算した金額とされています。
これを受け、在東京タイ大使館(東京都品川区)は、10月9日付プレスリリースでマルチプルエントリービザの発行を開始することを正式に発表しています。申請費用は1Bt.=4.4円の大使館指定レートで5,000Bt.を換算して、22,000円と決められました。
在ビエンチャンタイ大使館領事部(ラオス)は、本国からの連絡を受け、領事部に出入りしているビザ取りツアー会社に対して
「ダブルエントリーを廃止してマルチプルエントリーにする」と通告しました。ビエンチャンでビザを取得する外こもりすとは、多くがダブルエントリーを取得後に延長して1枚で最大6ヶ月の在留許可を得ていましたが、今後はマルチプルエントリーを取得して60日ごとに日帰りビザランすれば良くなり、経費もビザ1枚につき800Bt.程安くなります(ダブルでは2,000Bt.+延長2回で3,800Bt.の計5,800Bt.必要。マルチプルは5,000Bt.ポッキリ)。正規観光ビザを延長する必要が発生するのは、シングルを取った場合に事実上限られます。ただし、同一年中に2回マルチプルエントリービザを取得して1年間の滞在ができるかどうかなど、不安要因は残ります。
なお、一部の国籍と公館に限って発行されているカンボジアとの共通ビザ『ACMECSビザ』は、マルチプルにはならないので注意が必要です
(前記事「何が何だかわからぬ共通ビザ制度」参照)。