2012年8月18日土曜日

JAL独り勝ちの国際線手ぶらサービスに風穴

ANA(NH)は、9月1日から日本を出発する国際線で預け手荷物のチェックイン作業を不要化する「手ぶらサービス」を導入すると発表しました。国内宅配便最大手のヤマト運輸とその持株会社ヤマトホールディングス(東京都中央区、東証1部上場)をパートナーに指名し共同で開発を進めてきたもので、この分野で大きく先行した日本航空(JL)に続き、受託手荷物宅配の分野でもいよいよ本格的な競争が始まります。

日本航空では2005年に「JAL手ぶらサービス」の名前でスタート。地上サービス子会社「JALエービーシー」(東京都中央区)が元々行っていた「JAL空港宅配サービス」のシステムを応用したもので、出発空港に搬入された荷物をJAL ABCの職員が保安検査して預け手荷物とする制度をいち早く確立しました。

ANAも2009年からハンドリング子会社「ANAエアサービス東京」(千葉県成田市)を通じて、「ANAスカイポーター」の延長線上で手ぶらサービスを提供してきましたが、サービスの全面的見直しを進める中でヤマトグループへの移管が具体化しました。ANAグループの持株会社制移行を前に、子会社の再編を進める過程で手荷物分野でのヤマト運輸との協力関係を深化させる必要があると判断したとみられます。

ちなみにもともとANAとヤマト運輸の関係は深く、国内線では到着地空港で預け手荷物を宅急便に載せ替える「快速宅空便」を1997年から行っていて、スカイポーターも一部ヤマト運輸のネットワークを利用して搬入が行われていました。

対象は成田・羽田・関空を出発するANA自社運航の国際線便。中部セントレア出発便と、他社コードシェア便は手ぶらにできません。

空港宅急便手ぶらサービスでは、空港宅急便料金(通常の宅急便運賃に620円プラス)に加え、さらに310円の手ぶら追加料金がかかります。例えば、成田空港からの出発に向けて東京都内の自宅でスーツケース1個の集荷を依頼した場合、運賃1,370円+空港宅急便基本料金620円+手ぶら追加料金310円で、合計2,300円という計算。これに対し、JAL手ぶらサービスでは8月1日から従来500円かかっていた手ぶら料金が廃止されたため、出発宅配料金1,980円だけで荷物は到着地のバゲッジクレームまで一直線。JALのほうが320円安く、結果的にJAL ABCが8年間かけて積み重ねた実績が乗客に還元される形になりました。

申し込みはANA SKY WEBで国際線便の予約・購入完了後に出てくるリンクを辿って、ヤマト運輸のWebサイトに行きそこで行います。手続き完了後に指定された場所にSD(セールスドライバー)が伝票を持って出向き、荷物の受け渡しを行います。この時に現金かAMC Edyカードにチャージされた楽天Edyの残高で支払いをします。電子マネーは、Suica(ICOCAなど互換の交通系カードは取扱地域に制限あり)、nanaco(セブン&アイHLDGS.)、WAON(イオン)、AMC Edy以外の楽天Edyカードも使えます。
クレジットカードは、ANA Suica VISAカードやみずほマイレージクラブ/ANAなど、ヤマト運輸が指定した電子マネー機能(上記)が付いている物に限り利用可能で、その場合も後払い決済することはできず、事前に電子マネー部分にチャージした残高から引き落とします。

なお、搭乗便の目的地が北米大陸(ニューヨーク、ワシントンDC、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、ホノルル)の場合は仕向国アメリカの保安基準によりチェックインカウンターでの開披検査が義務付けられるため、手ぶらサービスは不可。従来通り空港の宅配便カウンターで荷物を一度受け取って、手荷物カウンターに運び預ける必要があります。
   
《宅急便のヘビーユーザーには注意点あり》
宅急便を日頃から回数券で利用している企業関係の方の場合は、基本運賃の部分について回数券の利用ができますが、空港宅急便料金と手ぶら追加料金は現金か電子マネーで支払う必要があります。

またヤマト運輸にお勤めの方で社員割引(運賃600円+空港宅急便料金620円)を利用する特殊なケースでは、手ぶらは不可です。この制度ではSDによる集荷ができないと規定されているためで、所属または自宅最寄りの宅急便センターへの持ち込みと、出発地空港での荷物受け取り手続きの両方が必要です。