スカイマーク(BC=SKY 東京都大田区、東証マザーズ上場)の西久保慎一社長は12日、東京・霞が関の国土交通省本省に羽田雄一郎大臣を訪ね、「日本航空殿の再上場についての意見書」という文書を提出すると共に、記者会見して発表しました。
(前記事「SKYがANAを公然批判『JAL再上場に賛成』の意見書」の続きです。2分割の2本目となります)
《共存共栄こそが安定をもたらす》
「(JALさんが)再上場を果たして業界全体が安定することは結果的に当社の経営にも安定をもたらすことになり喜ばしい。当社としてはJALさんの再上場を歓迎しております」
「ANAにおいても過去最高の黒字を出していながら2,000億円もの資金調達をしようとしています」
最高益を達成しながらもなおエクイティファイナンスを成功させなければ、ANAは有利子負債が増える一方となり財務体質を悪化させてしまいます。自社が新株発行増資を目指しているのであれば、ライバル社の上場復帰による信頼回復はエクイティファイナンス成功の恩恵を受ける意味で避けて通れない道であり、伊東信一郎ANA社長兼CEOの個人の感情だけで反対と言いだすべきではなかったというのが西久保社長の導き出した結論だといえます。
《スターアライアンスの排他的体質》
「業界の安定という錦の御旗を(ANAが)自社の損得で使い分けることは品性に欠けるものではないでしょうか」
これはANAに限らず、スターアライアンスの他の加盟社にも言える排他的、独善的な体質が根底にあるのではないかと考えます。
スターアライアンスは他の2つのアライアンスと比べて約2倍の加盟社があることから、結束を重視するべく排他的な性格で加盟社を極度なまでに拘束する体質を持っています。その上他のアライアンスの加盟社に対しては攻撃的ともいえるほどの冷淡さを見せます。
この5月限りでスターアライアンスを脱退したbmi(BD)の時は、親会社のルフトハンザ(LH)が一方的にIAG(インターナショナルエアラインズグループ:ブリティッシュエアウェイズ=BAとイベリア航空=IBの持株会社)への売却を決めたにもかかわらず、表向きには事実上の追放に近い態度を取りました(前記事「bmiとBAが統合、スターアライアンスから脱退へ」参照)。
それでいて旧コンチネンタル航空(CO)がスカイチームを脱退し、ユナイテッド航空(UA)との統合を視野に入れて移籍した時には、1年以上もの準備期間をかけて脱退後、わずか3日でスターアライアンスメンバーズとしての活動が始まるなどの周到な策を練りました。逆にヴァリグブラジル航空(RG)の追放劇では、連帯運送契約を切ってから数ヵ月後に正式に追放を決めるなど、アライアンス主導で加盟航空会社を倒産にまで追い込んだ前歴もあります。
よそ者に非常に冷たく、自分達が利益を上げられればそれでいい。スターアライアンスの利益こそが業界の安定であるという自己中心主義的発想と取ることができるものですが、ANAは他のアライアンスに加盟していない会社(カタール航空、ヴァージンアトランティック航空など)との提携関係も長年深めており、必ずしもスターアライアンス至上主義の一翼と断言できる政策を取っている訳ではありません。最近も非メンバー社の山東航空(SC、中国国籍)との提携開始を発表したばかりです。ただ、JALにはどうしても冷たく当たらなければならないという国内事情、ワンワールドやスカイチームに対してはスターアライアンス全体の立場の問題もあり、伊東社長は常に難しい選択を迫られていることも理解しなければなりません。
その一方で、エアアジアジャパン(JW)やPeach(MM)がありながら、本格航空会社としての自社の顧客も簡単には逃がす訳にいかないという、格安子会社を傘下に持つ航空会社ならではのジレンマに、ANAが陥ったことを意味するのではないかと見る向きもあります。