日本航空(JL=JAL、東京都品川区)は2012年1月1日から、JALマイレージバンク上級会員への昇格に他社よりも厳しい基準を導入します。実績の50%以上がJAL自社便またはグループ会社運航便への搭乗だけで達成されなければならず、上級会員資格を早く安く取得することだけを考える「修行僧」と呼ばれるマイレージマニアには不利な改定です。
具体的には、日航自社運航を含むワンワールド加盟各社の便に搭乗するごとに区間マイルや搭乗クラスに応じて付与される「FLY ONポイント」と搭乗回数の2つの基準について、達成基準の少なくとも50%以上がJL運航便への搭乗で達成されなければならないとします。本来の達成基準は以下の表の通りなのですが、
FLYONポイント | 搭乗回数 | |
JMBダイヤモンド | 100,000 | 120/ 35,000ポイント |
JGCプレミア (過去にサファイア以上を獲得し JGCに入会した人に限る) | 70,000 | 80/ 25,000ポイント |
JMBサファイア | 50,000 | 50/ 15,000ポイント |
JMBクリスタル | 30,000 | 30/ 10,000ポイント |
このうちの50%がJL便となると、次の表をあわせて達成しなければならないということになります。
FLYONポイント | 搭乗回数 | |
JMBダイヤモンド | 50,000 | 60 |
JGCプレミア (過去にサファイア以上を獲得し JGCに入会した人に限る) | 35,000 | 40 |
JMBサファイア | 25,000 | 25 |
JMBクリスタル | 15,000 | 15 |
2012年にワンワールドに新規加盟するキャリアのうち、マレーシア航空(MH=MAS)がクアラルンプール~シンガポールに代表される短距離高頻度路線を抱えているため、アライアンス加盟他社の便で上級会員資格を安く稼ぎ、かつマイレージプログラム運営キャリアの利益に貢献しない「修行」が行われる可能性を封じる狙いがあるとの見方も一部にあります。
ユナイテッド航空(UA=UAL)の場合、タイ国際航空(TG=THA)のタイ国内線に多く乗ってわずか10日でマイレージプラスの最上級資格「プレミアエグゼクティブ1K」を獲得するという、「バーツラン」が1997年のスターアライアンス結成直後から行われてきました(前記事「3月、バーツランが難しくなる」参照)。ANA(NH、東京都港区)もスターアライアンスへの加盟当初はバーツランを黙認しましたが、「ANAカードスーパーフライヤーズクラブ」の取得者が増えすぎたとして2007年、達成基準をプレミアムポイント(JMBのFLY ONポイントに相当)に一本化して搭乗回数だけでは達成できないようにしました。JALもANAと同様に、搭乗回数だけでは達成できなくする案もありましたが、日本トランスオーシャン航空(NU=JTA、那覇市)の沖縄県内路線や本土では羽田~伊丹といった新幹線競合の短距離高頻度路線を利用するビジネス客が多数いることから、それら利用者に配慮するとの決断をした模様です。
もっともJALとANAの場合、スカイマーク(BC=SKY、東京都大田区)の就航による那覇~宮古線での運賃値下げ競争によって修行僧が既にそちらに向かい始めているといいます。那覇~宮古線を最も安い「スーパー先得」で利用すると片道2,900円で、獲得FLY ONポイントは666ポイント。理論的には、最安15万円でJMBサファイアとJGC入会資格を獲得することが可能という机上の計算も成り立ちます。もちろん100%JALグループ(NU)便で稼いだマイルとFLY ONポイントでJMB上級会員、JGCホルダーに昇格です。ということは現地の観光振興も兼ねて、修行僧には沖縄に行ってもらった方が会社的にはありがたいのでしょう!?