2011年12月16日金曜日

ニュージーランド航空が「本流」に帰る日

 ニュージーランド航空(NZ)は15日、ANA(NH)とコードシェア運航および日本国内での地上業務委託に関する契約を結んだと発表しました。エチオピア航空(ET)の加盟に合わせアジスアベバで行われていたスターアライアンス社長会の席上、調印が行われたものです。2012年3月25日からの夏スケジュールで、成田と関空からニュージーランドのオークランドとクライストチャーチへ運航している週8便のNZ自社便にANA便名が付けられ、これまで付いていた日本航空(JL)便名は外されます。また、成田空港ではチェックインがこれまでの第2ターミナルから、スターアライアンスメンバー社の集まる第1ターミナル南ウィングに変更されます。

ニュージーランド航空は1999年3月に加盟した、スターアライアンスの中でも古参メンバーの1社です。しかし、これまでは資本関係の都合でスターアライアンス内では「傍流」的な扱いを受けていました。ワンワールドに加盟している日本航空が出資していたのに加え、一時完全子会社化していたアンセットオーストラリア(AN)の破綻を巡って2001年にはカンタス航空(QF)が買収を検討して独禁法上の問題で却下されるなど、常にワンワールドメンバー社の圧力のもとに置かれていたからです。

スターアライアンスの場合、他のアライアンスに加盟している会社とコードシェアないしは共同運航契約を交わした場合、その便では自社以外のメンバー社のコードシェアを付けることに制約があり、また他社マイレージプログラムにマイルを加算することができません。NZの場合、「タスマン&パシフィック」と通称されるオーストラリア路線がマイル加算の対象外になっています。似たような例として以前、日本航空が運航するタイ国際航空(TG)との共同事業便をTG便名で購入しても、ANAマイレージクラブなどスターアライアンスメンバー他社のプログラムにマイルを積算できないということもありました。

2010年1月に日本航空が会社更生法の適用を申請し、日本航空が保有していたNZ株が政府に売却されました。これを契機に資本系列を整理してスターアライアンスの「本流」へ復帰する道が開けるという意味で、NZにとって有利な状況になりました。カンタスがワンワールドメンバーでNZはオーストラリア国内線を持っていないということもありオセアニア全体でスターアライアンスは不利を強いられてきましたが、今ここで日本航空とのコードシェアを解消してANAと契約を結び直すことが、スターアライアンス全体のオセアニア地域戦略で有利になると判断した模様です。NZがカンタスという地域内のガリバーに抗して自社の立ち位置を明確にしていくには、スターアライアンスの「本流」に復帰することが絶対必須の経営課題だったのです。

それと同時に、カンタスによる敵対的買収を避けられるという企業統治面での利点も忘れてはなりません。どこのアライアンスにおいても、敵対的買収によってメンバー社を失うことは最も避けなければならないリスクの一つです。最近ではコンチネンタル航空(CO)がユナイテッド航空(UA)との統合によってスカイチームからスターアライアンスに移籍していますが、逆に上海航空(FM)が中国東方航空(MU)に買収され、スカイチームに移籍した例もあります。
スターアライアンスの場合、NZが脱退するとオセアニア地域の加盟社がなくなってしまいます。それだけにNZが敵対的買収の危機に晒されるのは御免蒙りたいところ。グローバルリスク回避の面で、今回の決定は有利に働くと見込まれています。