日本の梅雨末期の大雨とよく似た雨季終わりの大雨、洪水は熱帯のタイにもあります。特に支流が集まってチャオプラヤ川になるナコンサワン県から、海に流れ出すサムットプラカン県までのいわゆるタイ中部地域はこの数年、ひどい洪水に悩まされています。
10月上旬にアユタヤ・アントン両県内の洪水がひどくなり、アユタヤ市全域が床上浸水。ロジャナアユタヤプロジェクト工業団地(アユタヤ県ウタイ郡)、ハイテック工業団地(アユタヤ県バンパイン郡)などが相次いで浸水に追い込まれ、日系大企業の工場が次々と使えなくなりました。
(画像1:ランシットのパインハーストゴルフクラブが水没。キャプローグより転載しました)
ハイテック工業団地内に倉庫を設け、日系大手機械メーカーの物流を担当している大手運送会社の駐在員氏は董事長ふくちゃんの取材に
「倉庫にあった製品が全部ダメになった。工場もやられて年内の仕事がなくなった」
と語ってくれました。
同じハイテック工業団地に進出している別の日系企業の駐在員も
「状況を理解できてない日本側からはお叱りを受けてしまって… 当面の対応で手一杯です」
と述べています。
ロジャナアユタヤプロジェクトに主力の4輪車工場を抱えているホンダ(本田技研工業)ではタイでの生産・販売が完全に止まりました。販売店では一般顧客からの新規注文受付を年内いっぱいストップせざるを得ない状況。12月には毎年恒例の展示即売会「モーターエキスポ」があり、今年発売したばかりの新興国向け戦略車「ブリオ」を売っていこうとしていた矢先だけに影響は深刻です。
その一方で、東部地域(チョンブリ県やラヨーン県)は影響をほとんど受けておらず、アマタナコン工業団地(チョンブリ市)やレンチャバン港周辺の複数の工業団地(チョンブリ県シラーチャ郡)は通常通りの操業を続けています。
しかし、バンコク首都圏中心部とスワンナプーム空港への洪水被害は絶対に食い止めなければならず、タイ陸軍は運河の浚渫を急ピッチで進めたり、排水機場をフル稼働させるなど対応に追われています。その効果もあり、首都圏中心8区(プラナコン・ポンプラップ・サームパンタウォン・バンラック・パトゥムワン・クロントイ・ワッタナ・ラチャテーウィ)では今のところ被害は出ていません。
(画像2:増水の中正常に運航しているセンセープ運河ボート。プラトゥナム桟橋にて撮影)
ですが、商店や施設では万が一に備え、建物の入口に土嚢を積んだり、コンクリートブロックで固めたりするなどの防水対策を取っているところが見られます。
(画像3:プロンポンの某レストラン。店の前をコンクリートブロックで固めた)