2010年1月24日日曜日

派遣切り組の来タイ、成功するのは少数

(前記事「現地採用にも入れ替わりの時が」から続きます。3回連載の2回目です)
 シーロム通り(バンラック区)の日系旅行代理店「さくらホリデイ」に勤めるとっぴーさんは、董事長ふくちゃんの取材に対してこう述べました。

「日本で派遣切りされ、タイに仕事を求めて来た後、タイでも職探しに失敗し、失意のうちに本帰国する人も増えている」

  朝日新聞が記事で取り上げた、在タイの日系コールセンターというのは、タイでは相当な特殊能力を要する、いわば高度専門職、技能職です


 日本語能力検定(独立行政法人国際交流基金主催)に合格したり、日泰ハーフでネイティブ並みの日本語力があるタイ人を採用すると、タイの平均よりもはるかに高いコストがかかります。それに対して、ネイティブの日本人を雇おうとすると、日本よりも低い労賃で使うことができながら、タイ人専門職に比べてコストを抑えることができ、かつ、労働者本人には平均的なタイ人労働者に比べて全然高い水準の生活をさせることができるのです。
 会社が受注する仕事は100%日本の企業からのものなので、サービスのすべてを日本本国に向けて輸出するという意味で、BOI(政策投資委員会)は外資の投資促進に値すると判断。現に、コールセンター業務を行う会社には、ワークパーミット (就労許可)を通常の企業よりも多く出せる特権が労働省とBOIから与えられています。
 ところが、そこでも面接で落とされたり、採用されても1年未満で解雇される日本人がかなりの数に上ります。

「コールセンター業務で不採用になるのは余程使えないと思われた人。だけどそれが多すぎる」(とっぴーさん)

 自分の能力以前に、この会社なら間違いなく採用してくれるだろうという安心感だけで面接に来る人がいるというのです。董事長ふくちゃんが日本で日雇派遣の仕事に就いたとき、派遣会社の上司はふくちゃんに対し、本音を語ってくれました。

「2009年2月からの1ヶ月間で50人以上面接したけど、実際に採用したのは10人いるかいないか程度。落とした大半の応募者からはやる気が見えてこなかった特に他の日雇派遣会社を切られた人は尚更だった

 日本のネット屋難民が、目的やスキルもなしにタイに来ても、就職活動を成功できる保証はありません。ましてや日本で何社も面接して落とされ続け、それに対して文句をつけたりするような「性格の悪い」派遣切り組には、タイでの居場所はないと断じてもいいです。

  日本でいう日雇派遣があてがわれるような仕事は、タイでは外国人が就労できない業種ないしは職種とされています(単純労働:外国人就労法6条)。ところが、カンボジアやミャンマーからの不法入国者を使った方が、タイ人よりも安く使えるという事実もあります。200Bt.に満たない、下手するとタイ人の最低賃金にも届かない日給で現場と宿舎を往復するだけの生活をする、カンボジアやミャンマー出身の建設作業員。そこに日本人が入る余地は120%ありません。

(画像:バンコク市内の建設現場にて。作業員に性別、国籍は関係ない)

「タイに来ればサバーイサバーイ、誰でも簡単に仕事が見つかる、と思っている日本人が非常に多い」(とっぴーさん)

 日本人がタイで就職できるのは、あくまでもタイ人には難しい技能を求められる職種、即ち専門職です。日本語フリーペーパーの求人広告を見ても、日本でそれなりの経験を持った人を幹部候補として募集するというのが多く、全くの未経験、タイ語や英語も話せない、単に仕事が欲しいという理由だけで日本から来ましたという派遣切り組に対して、在タイの普通の会社では面接での評価を低くして当然です。ましてや、海外に出て何ヶ月も就職活動だけで生活を続けられる訳もありません。タイで採用されなければ、いつかは日本から持ってきた当面の生活資金が底をついて、帰国しなければならなくなる日が来ます。