2009年3月31日火曜日

外こもりは「TOKYOチャレンジネット」に救われない

東京都がホームレスやネット屋難民の住居問題を支援している「TOKYOチャレンジネット」。しかし、自分の意思で海外に出ていたバックパッカーや外こもりすとが帰国後ネット屋難民になっても、このプロジェクトの恩恵を受けられないことがTraveler's Supportasiaの取材で判明しました。

TOKYOチャレンジネットサポートセンター(東京都新宿区)によりますと、制度を利用するには次の条件があります。

・20歳以上の日本国籍者
・サポートセンターに初めて相談に来た日から遡って6ヶ月間、東京都内でネット屋難民またはホームレスとして活動した実績がある
・サポートセンターに行った時点で住居を保有していない、または賃貸していない。
かつ、住居確保に必要な現預金がなく、家族・親族などからの支援を受けることができない
・サポートセンターに行った時点で日雇い派遣、アルバイトなど、何らかの就労をしていること
・東京都内で就労する意欲があり、サポートセンターの支援を受けることによって自立かつ安定的な生活を営めること

海外に出ていたバックパッカーや外こもりすとはまず、東京都内居住の条件で引っかかります。「サポートセンターへ初めて相談に来た日から遡って6ヶ月以上、東京都内で生活していること」とあるのです。

東京都内に住民票があるかないかは問われませんが、期間には「海外にいた期間」は含みません従って、海外に出ていた期間が長いバックパッカーや外こもりすとは、東京でのネット屋難民の期間がないかあっても短いので、条件を満たさないということになります。

海外現地採用をめざして日本を離れ、就職できずに帰国した人も同様。現地採用で働いていたのに海外での就労継続をあきらめ、日本に戻ってきた人は尚更です。帰国直後に都内に住民票を入れ(転入届を出し)て、その足でサポートセンターに行き「はいお願いします」と言っても相談にすら応じてくれません。もし日本を出国する前に派遣切りに遭っていたとしても、自分の意思で長期間日本を離れたと判定されれば、事実上の門前払いになってしまいます。

ホームヘルパー2級資格を取得し、介護職に6か月以上従事すると返済不要になる「TOKYOチャレンジ介護」ではさらに厳しく、サポートセンターに来る前の6ヶ月間、生活実態だけでなく住民票も東京都内にないといけません

また、帰国直後の外こもりすとがすぐに入れるアルバイトを探すだけであれば、TOKYOチャレンジネットサポートセンターではなく、最寄のハローワーク(公共職業安定所)に駆け込んだほうが全然早く行けるそうです。TOKYOチャレンジネットサポートセンターでも、相談に来た時点で日雇い派遣もアルバイトもしていない、無職状態の人には仕事の紹介をすることも可能だそうですが、ハローワーク新宿(東京都新宿区)から最新の情報を取り寄せるため、2度手間になってしまいます。

インターネットで短期アルバイトを探す方法もありますが、4月になって新年度で募集自体が激減しています。アルバイト広告専門誌は事実上壊滅状態。「FromA」(リクルート)の廃刊(前記事「FromA、次週で廃刊」参照)で残る大手商業誌は「an weekly」(インテリジェンス)だけ。「domo」(アルバイトタイムス)や「anエリア」(インテリジェンス)などフリーペーパーも出稿が極端に少なくなっており、特に「domo」の木曜版である「maido!」は存続すら危ぶまれかねない薄さになってしまっています。製造業向け派遣元の募集兵器だった「Jobnap」(日研総業)は、製造派遣自体が壊滅したために請負や有料職業紹介へ主軸を移さなければならなくなり、ピンチに立たされています。

もし条件を満たし、資金を借り出すことができるとしても、まず「生活資金のみの貸付はしない」という規定で引っかかります。安定的な生活は、住居が確保されて初めて成り立つという考えのもとに事業が行われるためです。
「他に資金を用意する方法がある場合は原則として貸付対象にしない」という規定もあります。例えば友達が貸してくれるというのであれば貸付を受けることは不可能。

さらに、消費者金融などへの未払い債務があると処理方策を決めるまでは貸付が受けられません。処理方策は任意整理や民事再生、自己破産(同時廃止、免責含む)、過払い金返還訴訟がありますが、どのみち裁判費用、弁護士報酬は法テラス(独立行政法人日本司法支援センター)による立て替えで調達する必要があります。TOKYOチャレンジネットから貸し付けられた生業資金を使って払うことはできません。

貸付金のうち、敷金、礼金、当初1か月分の家賃に相当する金額は指定の不動産屋さんに直接振り込まれてしまうので、流用はできません。アパートの賃借期間が2年を超えることも必要です。

そして、完済するまでサポートセンターの支援を離れることはできません。返済期間は最高で5年です。サポートセンターは、返済の見込みのある特殊な形の生活保護として貸し出すのですから、その期待に応えなければなりません。

半年や1年程度の日本在留期間、つまり出稼ぎ程度ですぐに海外に戻ろうというのであれば、生活保護(給付)や失業保険といった他の選択肢を活用したほうが良く、最悪の場合にはネット屋難民を続けたほうが逆に有利になることもあります。

それでもTOKYOチャレンジネットの利用を目指すのであれば、帰国後半年程度の期間をおいてから、パスポートの帰国スタンプのあるページのコピーを持って相談に行かなければならず、これから帰国する人が東京でネット屋難民を半年間続けるというのは経費の面でも、精神面でも現実的ではありません。自分ですべてを切り開ける自信があるゆえに外こもりすとになったのでしょうから、まず自分で策を見つけ出すことが第一。TOKYOチャレンジネットへの相談は外こもり活動そのものの継続を諦めた時の、最後の手段とするべきです。

TOKYOチャレンジネットサポートセンター
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-44-1 ハイジア3階
TEL +81-3-5155-9501

法テラス新宿
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-42-10
新宿公共職業安定所5階
TEL +81-3-6745-5600