バンコク・カオサン通り周辺では、日本人旅行者が日系旅行代理店「MPツアー」と「A&Rトラベル」の2社に集中するようになり、タイ人経営のいわば地場系代理店が総じて減収傾向になっています。昨年1月からだけで少なくとも5軒が閉店。中でもTraveler's Supportasiaの常連投稿者だったP'Jumさんが経営されていた「ナイスフライング」や、IBSトラベル(前記事「カオサン、IBSトラベルがドロン」参照)など、日本人バックパッカーに評価の高かった店が相次いで閉店に追い込まれています。
董事長ふくちゃんは、「決定版バックパッカーズ読本」(双葉社)の中で、
「目的に合わせて、もっとも使い手のある店をその都度探すのが結果的に最も安く効果的」
と書きました。そういう意味では、MPツアーもA&Rトラベルも、使い手のある、言うなれば他の店と比べて格段に秀でたものを持っている店ではありません。
旅行代理店が扱う商品は、航空券にせよツーリストバスにせよ、店の裁量の余地がほとんどありません。例えば航空券では、運賃本体、追加保険料、追加燃料費、空港税のすべてが支払われて、初めて発券処理に入れます。当然、これに店の利益を乗せる訳です。しかし、これら5つの要素のうち、代理店側が裁量できるのは、自店の利益分だけです。発券エージェントや航空会社に支払う航空運賃本体(仕入原価)は、取引している発券エージェントが同一なら、すべての旅行代理店で同一です。追加保険料、追加燃料費、空港税は、航空会社の指示に従って、取引している発券エージェントに関係なくすべての代理店で同一の金額を徴収しないといけません。
バンコクにある日系代理店の中でも、同一券種の航空券価格が店の利益次第で数百バーツの差になり、そうなると1バーツでも節約したい人は安い店に流れます。
ノースウエスト航空(NW=NWA)が出した、成田行き1年FIXオープン往復、3月31日までに出発条件のプロモーション価格を例に取りましょう。シーロムの日系代理店「ニュー東洋トラベル」が1人あたり12,000Bt.+TAXと表示したのに対し、スクンビットの「プログラムD」(以下プロDと書きます)は11,800Bt.+TAXと書きました。即ち、この時点でプロDのほうがニュー東洋より200Bt.安い。そして、MPツアーのHPを見てみますと、同じ航空券が12,400Bt.+TAXと書いています。そうなると、プロDと比べて600Bt.、ニュー東洋と比べても400Bt.も高くなってしまいます。このままではMPツアーはプロDにはもちろん、ニュー東洋にも客を取られることになります。
カオサンにある日系代理店の魅力は、すべての取引が日本語で完結し、なおかつカオサン地区に宿泊しているバックパッカーがわざわざバスに乗ってまで他の場所へ移動しなくてもいい、ただそれだけにすぎません。
特にA&Rは、前記事「バーツへの交換レートには内外差がある」へのコメントでP.N.裕治さんが分析していただいたように、バンコクの日系旅行代理店の中でも最も不利な為替レートで日本へ通信販売している実績があるだけに、HPの表示価格が安いからといって必ずしも発券通やマイレージマニアに支持されている訳ではありません。
さらに、致命的欠点があります。MPツアー、A&Rとも、JCBカードが使用できないのです。お手持ちのクレジットカードがJCBで、カード決済を希望するなら、銀行のATMでキャッシングしてくるか、使える店に行くしかありません。プロDはJCBカードを使用できる(手数料3.4%)ので、両社はJCBカードで多額の決済をしてくれるであろう日本からのビジネス客をプロDにみすみす流してしまう結果になっています。
董事長ふくちゃんが厳選した、現時点でもっとも使い手のある旅行代理店を、後日別記事で紹介しますので、そちらを参照して、少しでも有利に旅を進めてください。