2007年12月18日火曜日

【重要】タイとカンボジアの正規観光ビザ、一本化へ

 タイのニット外相は昨日17日、プノンペンでカンボジアのハオ・ナムホン外相と会い、2003年以来の懸案だった両国のビザ一本化を実現すべく協定に調印しました。両国で関係法規の改正などの準備を行い、早ければ2008年中、遅くとも2009年には実施に移す予定です。

 新協定に基づくビザ制度の一本化が実現しますと、タイ、カンボジアのどちらか一方で正規観光ビザを取得した旅行者は、在留許可期間中、両方の国をシームレスに移動することができるようになります。

 アンコールワットのあるシェムリアプへ向かう観光客のほぼ90%がバンコクを経由しているというデータもあり、旅行者の利便が増す一方、これまでポイペトなどのボーダーを利用してきた沈没組は極めて深刻な状況に追い込まれることがほぼ確実になりました。ただ、有利と不利、どちらに転ぶかはこれからの議会審議を見てみないとわかりません。特にタイは23日に総選挙を控えていますので…

《ボーダー廃止の可能性は?》
 今回のプノンペン協定は、EUのシェンゲン協定にヒントを得ているだけに、タイからカンボジアへ向かうボーダー(現在6ヶ所)が廃止されてしまう可能性を一度は考えました。
 しかし、一本化されるビザの対象が外国人だけで、タイ、カンボジアそれぞれの国民が行き来するときに取得を義務付けられている相手国のビザが協定に入っていないのであれば、国境検問の廃止はあり得ません

 ですが、バンコク首都圏からアランヤプラテートやバンレムへ向かっているビザクリアツアーに制約が出るのは間違いありません。カンボジア行きを取りやめ、ノンカイやメソットといった、ラオス、ミャンマー方面の国境へ行くツアー会社が出るでしょう。そうなるとバンコクからの距離は2倍以上に伸び、従来のような日帰りもできません。
 将来的には、ラオスとベトナムも今回のプノンペン協定に参加するといい、そうなればビザクリアの行き先は事実上マレーシアに限られてしまいます。タイ北部の沈没組はラオスを通り越して中国国境のモンラーまで行かないといけない(しかも日本人以外は中国Lビザが必要)という、現実的に考えにくい状況に追い込まれます。

《ビザなし6ヶ月90日ルールが反古になる!?》
 もしボーダーが存続したとしても、今度はタイ側のビザなし渡航(พ.30)が問題になってきます。タイにビザなしで入国した人がカンボジアに行く場合はカンボジア側のビザが必要ということになればさぁ大変。カンボジアのツーリストビザを取得し入国した時点で、タイの正規観光ビザを取得したのと同等に扱わなければならなくなります。
 そうしますとその時点でタイのビザなし在留は終了、以降は正規ビザですからビザなし6ヶ月90日ルールに基づく日数の計算はストップ。つまり、ほとんどの沈没組がカンボジアビザを取ることで6ヶ月間に60日以内のビザなし在留しかしないことになり、6ヶ月90日ルールは事実上反古になってしまいます。

《ワークパーミット制度は守れるのか?》
 タイには独自のワークパーミット(就労許可)制度があり、外国人はノンイミグラントB(就労)ビザを取得しても、入国後に所属会社からワークパーミットを申請してもらって、初めて合法的に働けます。ところが、カンボジアにはそれがありません在外公館(e-VISAは不可)で「エントリー資格」ビザを取得し入国すれば、そのビザだけで働くことができます。延長も最大1年単位で無制限に可能。6ヶ月以上の延長をすれば自動的にマルチプルエントリーもついてきます。
 従って、エントリービザを持っている人の在留資格をタイ側がどう判断するかによって、ビザ制度の根幹ともいえるワークパーミットの制度自体が守れるかという、タイ側にとって最大の問題が発生します。ちなみにシェンゲン協定では、就労ビザは発給した国でのみ働くことができ、他の加盟国では観光ビザ扱いとみなしています。
 その結果次第では、沈没組が一斉にエントリービザ取得へ走りかねません。

 董事長ふくちゃんも、プノンペン協定の批准過程を今後徹底的に追いかけます。

《その後》
2012年になって、『ACMECSシングルビザ』という形で観光ビザの一本化は実現しましたが、取得した時点では一方の国のビザしか有効にならず、もう一方の国へ行く場合は国境ないしは空港で正規のビザ料金を支払う必要があります。詳しくは後記事「何が何だかわからない共通ビザ制度」を参照してください。